太平洋戦争末期、都市部の児童が地方に送られた学童疎開。「戦争は罪のない子どもを巻きこむ」と、経験の継承に取り組んできた近畿のグループが、体験集を作成した。会員の高齢化からすでに解散を決めているが、最後の活動として、朗読会を21日に開く。
グループは「国民学校と学童疎開を考える会」。2009年に大阪市や神戸市などの国民学校から疎開をしていた有志で発足し、シンポジウム開催や語り部活動などに取り組んできた。「会員の高齢化が進む中、きちんと記録を残していこう」と昨年1月に証言集作成をスタート。発案した寺師一清事務局長はその2カ月後に急逝したが、今年6月、証言集「学童疎開を語り継ぐ」(新風書房)の刊行にこぎ着けた。
滋賀県や和歌山県、島根県などに疎開した会員約30人が体験を寄せた。現在の兵庫県朝来市(あさごし)に疎開した男性は「その間に神戸の空襲で母親と弟が死亡した。このことがなんといっても一番悲しい」。福井県小浜町(現・小浜市)に疎開した女性は「夜は大阪恋し母恋しと涙し、一人が泣くとまた一人と連鎖」と振り返った。編集委員長を務めた新風書房の福山琢磨さん(85)は島根県育ちで、疎開を受け入れた側の視点を寄せた。大阪から来た児童と仲良くなりたかったが、「方言やアクセントでこちらの言葉が伝わらなかった」という。
「国民学校と学童疎開を考える会」、21日に証言の朗読会
会は証言集の発行で一定の役割は果たしたとして、9月末で解散することを決定。21日午後1時半から、「学童疎開75年の回顧」と題した最後のイベントを大阪市西区の市立中央図書館で開く。活動の報告や証言の朗読会、学童疎開を描いた映画「ボクちゃんの戦場」の上映がある。無料、先着300人。
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