老後の生活費が2千万円不足するという金融庁審議会の報告書は、図らずも国民にくすぶる不安の根をあぶり出した。
日本の財政と社会保障に「未来」はあるのか、という疑問である。
未来に背を向け「今」だけ語る
国と地方をあわせた借金は約1100兆円。国内総生産の230%という借金依存度は先進国で最悪である。これは預金封鎖やハイパーインフレがあった第2次大戦に敗戦した時の数字にも匹敵する。
にもかかわらず第2次安倍政権下の6年半に、この問題が国民的議論になったことはない。アベノミクスのもとで日本銀行が国債を買い支え、表面的には財政が維持されているからだ。
円安の追い風を受けた大企業の業績は改善し、株価も上がった。政権は、企業や投資家が潤えば富が滴り落ちるように経済が良くなり、結果として財政も安定する、という楽観論をふりまいてきた。そんな「魔法のつえ」は、なかった。
団塊の世代が全員75歳以上となり、社会保障費が急膨張する「2025年問題」まであと6年。その備えに、私たち自身の負担増は避けて通れない。
ところが政権にも国会にも…
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