女性の政治参加「男を立てろ」との闘い 嫌がらせ被害も
女性議員はなぜ増えないのか? 参院選投開票を前に、日本の女性学・ジェンダー研究のパイオニア、上野千鶴子さんに聞きました。対談したのは、全国で唯一女性市議がいなかったとされる鹿児島県垂水市で市制施行以来初の女性市議誕生を目指して市議選に立候補した高橋理枝子さん、「鹿児島県内の女性議員を100人にする会」代表で南さつま市議の平神純子さん。垂水市議選を取材した朝日新聞の記者も交え、やりとりは2時間を超えました。女性の立候補を阻むもの、参院選の「チェックポイント」について語りました。
鹿児島、3倍目指した
上野 鹿児島の現状について、平神さんからお聞きしましょう。
平神 私は100人にする会を、1996年に立ち上げました。その時、県内の女性議員は私以外に35人。
上野 3倍を目指したんですか?
平神 なぜ100人かというと、当時県内の市町村は96あって、1市町村に1人いればすぐ100人になるじゃないかと。いまは、66人で、全体の8.8%です。
なぜ女性政治家が増えないか、二つの理由
上野 なぜ女性政治家が増えないか。理由は二つ。
政治学者の投票行動調査によれば、女性の選挙権行使率は一般に男性より高い。投票にはいくけれど、女が女の候補者にいれない。女性票が家族票の一部になっていることが問題です。
二つめは、女の被選挙権の行使が少なすぎる。選択肢がないと投票する先がない。これから先、女性の政治家を増やすキャンペーンをするなら、「女よ、もっと選挙に出よう」。候補者を増やすしかない。なかなか増えないのには、家庭内抵抗勢力の存在があります。最大の壁は、夫と親族です。
高橋 夫は大阪出身で、いま66歳。定年退職して、応援に入ってくれました。
上野 じゃあ、夫が引退してバックヤードに。
高橋 夫は国家公務員だったので、転勤に一緒について行きました。いまは私が立ち上げた会社の社員です。
上野 いい攻守交代ですね。抵抗勢力はなし?
高橋 娘は少し「いやだ」といいました。
上野 娘も親元を離れる年齢でしょう。親の選択に文句を言う筋合いはありません。
高橋 結局、応援をしてくれました。なので家庭内抵抗勢力はいなかった。母も一緒に住んでいるけどなんとか。
上野 女が立候補を決意するには、家族に相談しないで、1人で決めるという秘訣(ひけつ)があります。家族には、事後通告をする。事前に相談をすると、出る前につぶされるから。だから壁のない人が出やすい。そういう抵抗がないのは、「後家さん」です。日本では夫と死別すると、選挙に出やすい。政治家の夫や父親が亡くなると後継候補に出たりします。
アジアの女性政治家って、だいたい夫とか父の看板を背負った妻か娘が多いですね。(フィリピンの)アキノ大統領、インドのガンディー首相、韓国の朴槿恵(パククネ)大統領とかもそうでしょう。だから女といっても、男の威光を背負った女です。
「もっと男を立てる言い方を」
――高橋さんは選挙中、男性の候補から男を立てろと言われた。
高橋 私の街頭演説を聞いて…
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