トランプ氏が恐れる泥沼戦争 米イラン、ともに手詰まり

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ワシントン=渡辺丘 テヘラン=杉崎慎弥
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 イランが再び核合意を破り、合意で定められた上限を超過するウラン濃縮に踏み切った。核合意を離脱した米国の原油禁輸措置に反発し、瀬戸際外交で欧州に取引再開を迫っている。トランプ米大統領は強い言葉で報復をちらつかせるが、自分の支持率低下につながりかねない軍事衝突には慎重姿勢を保っている。

 「イランは非常に、非常に慎重にしなければならない」。5日午前、米ホワイトハウス。トランプ大統領は記者にイランへの対応を問われたが、具体策には言及しなかった。イランのロハニ大統領が「必要なだけ(ウラン)濃縮を高める」と表明した3日には、「手痛いしっぺ返しをくらうだろう」と警告したが、肝心のその中身はわからない。

 国際社会が懸念するのは、イランが核合意の規制を超えるウラン濃縮をしたことを受けて、米国がイランの核関連施設への攻撃に踏み切るかだ。米・イラン外交関係者や米軍事関係者の間では、核爆弾の短期製造につながる高濃縮でない限り、米国の軍事行動はないと指摘する声が目立つ。

 最大の理由は、イランが中東屈指の軍事力を持ち、戦争になれば泥沼になる可能性が高いためだ。

 トランプ政権は2017年4月と18年4月、内戦下のシリアで化学兵器使用疑惑が浮上した際、「アサド政権が使用した」と主張して政権側をミサイル攻撃した。内戦で弱体化したアサド政権に反撃する力はなかった。だが、イランには反撃能力があり、主戦論を唱える対米強硬派もいる。

軍事衝突なら一気に戦線拡大も

 米国とイランはともに、イラクとシリアに軍を派遣している。イランは、レバノンの政治・武装組織ヒズボライエメンの反政府武装組織フーシを支援しており、米国の中東の主要同盟国であるイスラエルサウジアラビアをいつでも攻撃できる状態だ。米国とイランが軍事衝突すれば、一気に戦線は拡大し、中東の広い地域が戦火にさらされるおそれがある。

 中東を管轄する米第5艦隊元司令官のジョン・ミラー氏は「トランプ氏は米国が軍事攻撃に踏み切る基準について、対シリアでは化学兵器使用という一線を引いたが、対イランでは明確にしていない。米国とイランが戦争になれば、石油市場など世界経済に甚大な影響が出るので、本音では望んでいないだろう」と指摘する。

 実際、トランプ氏は6月20…

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