独裁者にあこがれる米大統領? 米朝首脳会談を読み解く
現職の米国大統領が軍事境界線を越え、初めて北朝鮮の地を踏んだ。電撃的な米朝首脳会談は世界を驚かせたが、核問題の解決は見通せない。壮大な政治ショーに過ぎなかったのか。
町山智浩さん(映画評論家・コラムニスト)
1962年生まれ。編集者などを経て97年から米国在住。著書に「今のアメリカがわかる映画100本」など。
板門店で実現した電撃的な会談や、それに至るトランプ米大統領から北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長へのツイッターでの呼びかけなどについて、一般のアメリカ人は混乱しています。今回に限らず、ポンペオ国務長官など政権の外交チームと、トランプ氏本人の言動が一致しない、というか対立しているからです。
来年の大統領選挙で再選を目指すトランプ氏は、「現職の米大統領として軍事境界線を初めて越えた」という実績を劇的に演出しようとしたのでしょう。
これに対し、米民主党上院院内総務のチャック・シューマー氏は「米国の外交で最悪の数日間」「リアリティーショー外交」と批判していました。再選に効果的な写真を撮るためだけの、米国の外交を不安定化する、典型的な「トランプショー」というわけです。こうした冷ややかな見方は、シューマー氏に限りません。
CNNはトランプ氏と金正恩氏の関係を「ブロマンス」と表現しました。「ブラザー(兄弟)」と「ロマンス」の造語です。トランプ氏が「私も彼が好きで、彼も私が好き」「二人は恋に落ちた」などと公言しているからです。
トランプ氏と金正恩氏、2人の本当の思惑は何なのか。記事の後半では、国際政治学が専門の佐橋亮・東京大准教授と、日朝関係に詳しい李泳采・恵泉女学園大教授が、それぞれの視点から米朝電撃会談を読み解きます。
金正恩氏に限らず、トランプ…
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