リストラのち、ひきこもり 収入は数万、頼みは母の年金

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高橋健次郎 栗田優美
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 「一生懸命、年金を払ってきた国民を守ろうとしない」、「お先真っ暗な気持ちに」――。老後の生活費が2千万円不足するとした金融庁審議会の報告書が、いまだに多くの人の心をざわつかせています。何が原因なのか、つましい暮らしやにぎわう投資セミナーの現場で聞くと、リストラ後、親の介護に直面するシングル女性などから、それぞれの厳しい現実が浮かび上がってきました。

報告書拒否、取り繕う姿勢に憤り

 「報告書を受け取らずとも、現実は変わらない。私の生活は厳しいまま。それなのに、年金制度がうまく回っているとの説明を繰り返し、安心させようと取り繕うような姿勢にカチンとくる」。西日本で一人暮らしの女性(58)は、こう憤る。

 月2回、心療内科に通う。障害年金の受給には至っていない。体調の波があり、対人関係が不得手なこともあってウェブライターとして働く。インターネット上に介護や英会話に関する記事を書き、収入は月1万~2万円程度という。昨年に脳梗塞(のうこうそく)で倒れて入院中の母親(88)の年金とあわせ、月計15万円程度でやりくりしている。「正直、母の年金が頼りです」。収入は、母親の医療費や、食費、光熱費、マンションの共益費などで消えていくが、今後の備えとして、毎月1万円程度は積み立てるようにしている。節約のため食材のまとめ買いもし、不要になった雑貨をインターネットオークションで売って生活の足しにする。週1回、地元のコーヒーチェーン店で友人と談笑するのが、「ぜいたく」な時間だ。

 報告書では「自助」を促す。でも、こうした暮らしがすでに、相応の倹約や備えという「自助」だと思う。

 もうすぐ59歳。あと3年、62歳からは月約5万6千円、65歳になると月約11万7千円の年金を受給できる。自宅マンションは持ち家で、住宅ローンはない。預貯金は200万円程度。「無駄な買い物をしなければ、生きていける」。いずれ、マンションの大規模修繕の時期がくる。不足分を賄えなければ売却して引っ越すつもりだ。それでも不安は尽きない。体調を崩した時は?

■「リストラ」「ひきこもり」…

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