プラモ水没、介護に忙殺…でも聖地の誇り、取り戻したい

有料記事西日本豪雨

遠藤真梨 細川卓 井手さゆり
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 「復活って言葉は、重いよね」

 岡山県矢掛町のプラモデル店「ERAYA」の店主、団迫敬郎さん(63)は、壁一面に積み上げられた真新しいプラモデルの箱を前につぶやいた。

 絶版品を多く扱うことから、北は福島、南は福岡からファンが集い、「プラモの聖地」と呼ばれた。1988年、岡山県倉敷市真備町にオープン。限定品などコツコツと集めた商品は約10万点、売値総額は1億円にもなった。それが昨年の西日本豪雨で全て水没。「青天のへきれきだよ」と団迫さんは言う。

 明治時代に真備を襲った大洪水は伝え聞いていたが、水害に備えた保険はかけていなかった。店舗が貸店舗で、賃料がかかることもあり、9月、店を畳んだ。

 そこへ追い打ちをかけるように、父親が手を骨折し、衰えが進んだ。全てを失った上に、食事や入浴介助など、親の世話に忙殺される中、自分らしくいられる場所を取り戻さなければ、前に進めなかった。もう前のような店にならないことは分かっているが、30年かけて築いた誇りを糧に、もう一度プラモデル屋をしたいと思った。

 店舗は、かつて両親が矢掛町で営んでいた家庭用品店跡に構えた。広さは以前の3分の1、商品は20分の1に。銀行から融資を受け、棚を商品で埋めつくした。週末こそ客足は途絶えないが、平日は寂しい。「あと10年。身体が動くうちは」。重いシャッターを、今日も開ける。(遠藤真梨)

■住民が描いた復興への道…

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