諫早干拓訴訟「開門認めず」 最高裁が初判断、判決確定

北沢拓也
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 長崎県の諫早(いさはや)湾干拓事業をめぐる二つの訴訟で、堤防排水門の開門を認めない判決が確定した。最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)が26日付の決定で、開門を求めていた漁業者の訴えを退けた。一連の訴訟で、最高裁が開門の是非についての判断を確定させたのは初めて。最高裁に残る1件の関連訴訟は同じ第二小法廷が担当し、7月に弁論が予定されている。この訴訟の判決によって、長年の法廷闘争が実質的に終わる可能性がある。

 干拓事業をめぐっては、「開門派」の漁業者と「開門反対派」の営農者がそれぞれ国を相手取って訴訟を起こしている。漁業者が2002年、佐賀地裁に起こした訴訟(①)は開門を命じた一審判決が10年に福岡高裁で支持され、当時の民主党政権が上告しなかったために確定した。一方、別の漁業者が08年、長崎地裁に起こした訴訟(②)は一、二審ともに開門を認めず、漁業者が上告していた。

 営農者側も①の判決に反発して11年、開門の差し止めを求めて長崎地裁に提訴(③)。早期に結論が得られる仮処分も申し立てて、13年に認められた。開門を命じた確定判決と差し止めの仮処分という司法判断で「板挟み」になった国は14年、①の判決による開門を強制しないよう漁業者に求める「請求異議」訴訟(④)を提起。一審は国が敗訴したが、18年の福岡高裁で逆転勝訴したことで①の判決が無力化され、漁業者が不服として上告している。③の本訴も開門の差し止めが17年に地裁で認められ、国は控訴しなかった。

 今回、最高裁は②と③をめぐる決定を出した。②については開門を認めなかった一、二審判決を支持して上告を棄却し、漁業者敗訴が確定した。③では、控訴しなかった国の判断を不服として、「独立当事者」としての参加を申し立てた漁業者の訴えを退け、営農者勝訴が確定した。ともに、詳しい理由は示さなかった。

 7月26日に弁論が予定されているのは、残る④の上告審。二審判決は「漁業権がすでに消滅している」と判断して、国を勝訴させた。最高裁が民事訴訟で弁論を指定する場合は、二審の結論を見直すことが多いが、二審の問題点を指摘したうえで結論を維持することも可能だ。現在は開門を命じた①と認めない②、③の判決がいずれも確定して「ねじれ」が起きているが、②と③を確定させた第二小法廷が④も審理しているため、この点も踏まえて判断するとみられる。(北沢拓也)

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 〈国営諫早湾干拓事業〉 国営諫早湾干拓事業 農地の確保と洪水被害の防止を目的に、全長約7キロの潮受け堤防排水門で湾を閉め切り、干拓地と淡水の調整池を設けた。総事業費は2533億円で、農林水産省が1989年に着工し、08年に営農開始。漁業者は閉め切りで漁業が不振になったとして開門調査を要求。干拓地の営農者は、農地に塩害などが出ると訴えて開門に反対している。

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