夫の暴力、DVと気づくまで10年 壮絶な家族再生の道

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熊井洋美
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 千葉県野田市の小学4年生虐待事件で起きていたDV(家庭内暴力)に、かつての自分を重ね、心を痛めている人がいる。夫から10年以上にわたってDVを受けてきた県内の女性。「自分をあきらめていた」。こう当時の心境を語る。夫婦や家族の関係を修復するプログラムを受け、いま、夫や子どもとの絆を築き直す努力を続けている。

 主婦のアキさん(51)=仮名=。夫から長く受けた言葉や身体への暴力がDVと気づくまでに10年以上かかった。

 「自分が一番正しい」「家の中では家長(自分)に従うのが当然だ」

 22歳の時に結婚した夫は、そういう考えの持ち主だった。アキさんには「稼いでいないお前が責任をとれるのか」、3人の子どもには「自分がいるからお前たちのいまがあるんだ」。反論すると、かんしゃくを起こし、暴れた。「一人で生きていけない。自分が問題なんだ」。勤めに出ていないアキさんは離婚の恐怖もあってそう思い込み、誰にも打ち明けられなかった。

 いつからかアキさんは「夫が正解だと思うこと」を探して行動するようになる。家族は反応におびえていた。

 30代半ばでアキさんは精神の病と診断され、通院を始めた。「俺がこんなに家族のために稼いでいるのに」「別れる」。なじる夫の言葉を真に受けた。「自分は常識のかけらもない欠陥人間なんだ」

 暴力は時に激しく、首を両手でグッとつかまれたり、後ろから引っ張られて床に尻をついたりして「頸椎(けいつい)ねんざ」「尾骨骨折」との診断も受けた。受診先の看護師にDVの相談支援センターの栞(しおり)を渡され、「帰りに寄って」と言われたが、「DV被害者」の自覚はなかった。

 医師から次に暴力があったら警察へ行くよう促されたが、「私の説明はどうせ信じてもらえない」「警察に相談したら、その先はどうなっちゃうんだろう」。通報する発想はなかった。

 DVを自覚する契機は5年ほど前。娘への暴力が強まった時だ。

 当時、大学生で就職活動中…

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