金融庁報告書からの「問い」 現実から遠ざかる政府の姿

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日曜に想う 編集委員・大野博人

 金融庁審議会の報告書騒ぎに、長崎大学核兵器廃絶研究センターの鈴木達治郎教授は強い既視感をおぼえた。

 教授は、日本経済研究センターが3月に出したリポートの執筆者の一人。リポートは東京電力福島第一原発の事故処理費用は35兆円から80兆円と試算した。

 政府は2016年に約21・5兆円と発表していた。

 「問題提起でした」。溶けてしまった核燃料デブリを全部取り出すのは相当困難だし、リスクも大きい。取り出せるとするなら最終処分までのコストも考えるべきだ。そもそもいつ終わるかさえだれにも分からない事業。リポートの数字も確定できない要素を抱えながらの試算だが、「政府の数字は独り歩きしがち。日本に必要とされる第三者機関による監視を実践する意味もありました」。

 しかし、世耕弘成経済産業相は記者会見で、リポートについて、国の試算とは全く異なる独自の仮定に基づくものだとして退けた。

 「政府が自分と違う見方を議論しないという点で、年金問題と似ています」

報告書が立てた「問い」

 証券業界の人の話では、金融庁審議会の報告書が明らかになってから、老後の資金についての講演会やセミナーにやってくる人が急増したという。政府が報告書の受け取りを拒んでも、老後のためとされる投資信託への問い合わせや口座開設の注文が伸びているともきく。

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 何かした方がいいなと反応し…

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