脱ひきこもり、「出口」がカギ 先進自治体の語る手応え

有料記事ひきこもりのリアル

北上田剛 有近隆史 関口佳代子
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 ひきこもる人たちの孤立を防ごうと、先進的な取り組みをしてきた自治体がある。各家庭の状況をよく知る保健師ら福祉関係者の情報をもとに、ひきこもる人たちを積極的に訪ね、福祉や医療、就労支援などにつなげようとする手法だ。他の自治体からの視察が相次いでいる。

 秋田県の北端、白神山地のふもと。人口3200人余りの藤里町は、約10年前から戸別調査や就労支援に取り組んできた。

 町役場に近い福祉施設「こみっと」に食事処(どころ)や会議室が入る。町の社会福祉協議会が運営し、かつてひきこもっていた人も食事処で調理や配膳に加わる。特産のマイタケを使った土産品を販売していた男性(49)もその一人。「与えられた役割を果たしている感じがする」と話す。

 町が取り組みを始めたきっかけは、2005年ごろ、高齢者宅を回る社協のケアマネジャーらに「子どもが家から出ない」との相談が相次いだことだ。社協の菊池まゆみ会長(63)らが、翌年から各世帯を訪問するなどして18~54歳を調査。この年代の町民の8%超にあたる113人が、2年以上仕事をしていなかったり、家族以外との交流や外出の機会がほとんどなかったりしていた。仕事を探すのをあきらめてしまっている人もいた。

 当初、家から出てきてもらおうと、映画鑑賞や卓球などを企画したが「求められていなかった」と菊池さん。「こみっと」でヘルパー養成研修や、そば打ちなど、就労に結びつく活動をしたところ、しだいに参加者が増えたという。

 土産品を販売していた男性は十数年間、ひきこもった経験がある。近隣の高校を経て青森県内の大学を卒業。東京都内のソフトウェア会社に就職したが行き詰まり、母親の体調悪化もあって退職。町に戻ったが、職が見つからなかった。「何社かに断られると心が折れる。その繰り返しだった」と振り返る。

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