夢を封じ、売春で命つなぐ ベネズエラ女性が背負う失政

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ククタ=岡田玄
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 経済が破綻(はたん)し、政情不安が続く南米ベネズエラの人々が、食べ物も薬も手に入らない深刻な人道危機に見舞われている。幼子を抱えた母親や妊婦は、国境を越えてコロンビアに続々と入っていた。(ククタ=岡田玄)

 4月15日午前10時、コロンビア北部ククタのエラスモ・メオス大学病院。産科待合室の妊婦18人のうち15人がベネズエラ人だ。ほとんどが不法に国境を越えて来た。

 妊娠8カ月のおなかをさするマリアニ・キンテロさん(20)はベネズエラ中西部バレンシア出身。昨年夏に妊娠がわかり、母親と家を出た。「近所では出産で亡くなった人がいた。食べ物も薬もなく、安心して産めるとは思えなかった」

 パスポートの入手に700米ドル(7万8千円)が必要と言われた。売り物の肉がほとんどない肉屋で働く夫の収入10年分に当たる。そんな金はなかった。

 バスを乗り継ぎ、国境で民兵に2万8千ボリバル(600円)を渡し、抜け道を通らせてもらった。命の宿るおなかを気にしながら山道を慎重に歩いた。「国境の川の水が少なかったのが幸運だった」。コロンビアに入り、すぐ向かったのがこの病院だ。

 生後1カ月の女の子エメルリスちゃんを抱くマリア・グスマンさん(30)はこの病院で出産後、バレンシアの実家へ家族の看病に戻り、また不法入国したばかり。実家は停電が続き、水もガスも使えない。周囲の家からは、まきを燃やす煙が立ち上っていた。

 エメルリスちゃんが生まれた3月12日はベネズエラで最初の大規模停電が起きたころだ。「ベネズエラにいたら無事に産めたとは思えない。この子のために国を出ることを選んだ」と言って、抱きしめた。

医療費、9割が未払い

 この病院で出産する女性の6割以上がベネズエラ人だ。

 妊婦だけではない。医療を求める人々が後を絶たない。ジェニフェル・ゲレーロ救急部長によると、救急病棟の定員は75人だが、1日140~160人の急患を診ており、やはり多くがベネズエラ人だ。

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