土砂災害、実は同じ場所で 計算で迫る身近な危機

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編集委員・佐々木英輔
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 土砂災害はどのように起こるのか。長い時間をかけて斜面で繰り返される現象を再現し、より具体的な予測を目指す研究が進んでいる。どこが崩れるか、確実に言い当てるのは難しい。しかし、身近に迫る危機をつかめる情報は今もある。

崩れやすさ、いずれ復活 間隔長く、薄れる教訓

 土砂災害が起こると「何十年も住んでいて初めて」といった証言をよく聞く。毎年どこかで発生するものの、実体験する人は限られる。

 しかし長い目でみれば、同じ場所で何度も繰り返している。山口大の鈴木素之教授(地盤工学)らは、地層に含まれる植物片の年代測定や史料から、土石流が起きた時期を探っている。2014年8月に70人を超す死者を出した広島市安佐北区安佐南区の山麓(さんろく)付近は150~400年間隔、09年の山口県防府市の被災地付近では100~200年間隔で繰り返していた。

 「一生に比べて間隔が長いことが多く、教訓が薄れやすい。住む場所の成り立ちを知ってもらい、避難や対策につながれば」と鈴木さんは言う。

 同じ地点でみれば、土石流や斜面の崩壊を起こすような記録的な大雨はめったにない。しかも、いったん起これば土砂がなくなり、崩れにくくなる。これが間隔の長さの背景にある。

 しかし、崩れやすさはいずれ「復活」する。岩盤が地表近くから風化し、新たな土砂をもたらすからだ。地表の土の粒子は普段からゆっくりと下方へ移動し、斜面の谷の部分に集まる。数十年、数百年を経て、ここの土層は分厚くなっていく。

 条件が整ったところに大雨が降ると、土層は水で満たされて急速に不安定になる。限界に達すると再び崩壊。土石流が起こるきっかけにもなる。

地形と雨量のデータ活用 「危機」を再現

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 こうした斜面の変化の過程を…

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