やせた胸を押すふりして運んだ 蘇生拒否、救急隊の葛藤

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三上元 水戸部六美 角拓哉 阿部彰芳
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 心臓が止まっているなら、蘇生は望まない。でも救急隊には来てほしい。多死社会を迎える中、こうした場面が増えている。蘇生処置をすべきか。対応は地域でわかれるが、蘇生中止を認める動きが広がり始めている。

 東北地方の消防本部にある晩、119番通報が入った。「がん末期の高齢患者の呼吸が止まった」。救急隊長は、心臓に電気ショックを与えるAEDと人工呼吸器を携え、同僚とともに通報があった家に入った。

 やせた高齢の女性がベッドに仰向けで寝ていた。掛け布団のへりはまっすぐに整い、純白のタオルカバーがかかっていた。「大切に看病されていた」と隊長には一目でわかった。

 蘇生処置を始めようとすると、家族とみられる女性が「やめてください」と止めに入った。事前に本人と医師が話し、延命はしないと決めていた。ただ夜間に呼吸が止まった時の対応は決めていなかったという。思わず女性は119番してしまったという。

 隊長が、患者のかかりつけの病院に電話し、状況を説明すると、医師は「救命は必要ない」と即答し、続けた。「うちでは往診はしていない。そのまま患者をうちの病院に運んでほしい」

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 この消防本部のルールでは…

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