「ジルバ」で爆発したある思い 手塚マンガ大賞記念鼎談

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構成・加藤勇介 滝沢文那
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 第23回手塚治虫文化賞の贈呈式が6日にあった。記念イベントで、マンガ大賞を受賞した「その女、ジルバ」の有間しのぶと、賞の選考委員で「小説 火の鳥 大地編」を朝日新聞土曜別刷り「be」で連載中の桜庭一樹手塚治虫の長女手塚るみ子のトークショーがあった。恋も仕事もうまくいかない40歳女性が高齢女性ばかりのバーで働き始めてブラジル移民だったママの歴史に触れる受賞作の壮大な世界、手塚作品の魅力を語り合った。

 手塚 「その女、ジルバ」は手塚が冠の賞を受賞するにふさわしい作品です。桜庭先生は有間先生の大ファンですね。

 桜庭 まだ作家になる前の20代の頃に有間先生が20代の主人公を描いた「モンキー・パトロール」を読み、40代になって「ジルバ」を読んで新しい感動を頂きました。「人生100年時代」の新たな40歳像を描かれ、大戦後の日本の総括をブラジル移民の視線から描かれた。

 手塚 「モンキー・パトロール」はギャグですが、「ジルバ」は壮大で、作風が変わった印象です。

 有間 20代後半からの体調不良でギャグでは自分の気持ちをまかないきれなくなり、何かを乗り越える主人公を描きたいと変わりました。特に悔しい思い。苦しさを理解してもらえず一人で乗り越えないといけない、乗り越えているのに誰にも分かってもらえない、そんな気持ちに共感を覚え、それが爆発したのが「ジルバ」です。

 手塚 連載が始まったのが2011年。ご出身が福島県の会津で、震災の影響もありましたか?

 有間 ありますね。移民の話を描くというのはもう決めていたんですけど、人が生まれ育った土地はこんなに大事なのかと。故郷がない人、移り変わりを余儀なくされている人はどうだろうと、二重三重に影響を受けました。

 桜庭 大作をまとめるエネル…

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