トヨタが狙う建設的破壊 「父の事業に大なた」衝撃走る

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竹山栄太郎 細見るい 六郷孝也
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 「『勝つか負けるか』ではなく、『生きるか死ぬか』という瀬戸際の戦いだ」

 トヨタ自動車の社長、豊田章男(63)が危機感をあらわにした。2017年11月、役員体制変更を発表した際のコメントだ。

 豊田は09年に社長に就いた。リーマン・ショック後の巨額赤字や大規模リコール(回収・無償修理)問題をのりこえ、この6月で丸10年を迎えた。かつてないほど業績はよく、19年3月期の売上高は国内の企業で初めて30兆円を突破。だが、豊田は「トヨタは大丈夫というのが一番危険」といましめる。

 なぜか。自動車業界のビジネスモデルがそのうち通用しなくなるとみるからだ。

就任丸10年を迎えたトヨタ自動車の豊田章男社長が、会社のフルモデルチェンジを宣言している。変革期を迎えた自動車業界への危機感を燃料にして、トヨタが進める改革とは。

 「100年に1度の大変革期」。トヨタ幹部がよく口にするフレーズだ。目の前の変化はCASE(ケース)という言葉にまとめられる。つながる車(C)、自動運転(A)、シェアリング(S)、電動化(E)の頭文字をとった造語。自動運転ではグーグル系ウェイモ、ライドシェアではウーバー・テクノロジーズなど異業種が勢いづく。

 ITにすぐれた新たなライバルたちが、移動サービスの基盤をにぎる「プラットフォーマー」として立ちはだかる。車メーカーは消費者とのつながりを奪われ、プラットフォーマーの下請けになりかねない。危機感からトヨタが打ち出したのは、モビリティーカンパニー。移動に関するあらゆるサービスを提供する会社という意味だ。

 車を売って終わりでなく、消費者との接点を増やしたい――。原点は、豊田が一社員だった20年ほど前にあるとされる。中古車情報を端末で見られる新画像システムをつくり、音楽配信もできるようにしてコンビニ業界に売り込んだ。ただ、その奇抜なアイデアに当時の経営陣は難色を示した。

 社長に就いて10年がたち、ある幹部は「長年の思いをトップダウンで実現する態勢が整った」とみる。実際に動きは急で、技術や人材を得る提携や出資が相次ぐ。

 昨年8月、豊田は東京・汐留のソフトバンクグループ本社を訪ねた。「そろそろ我々が組むときだ」。同社トップの孫正義と豊田はうなずきあった。カラーの違う企業どうしの提携はトヨタが持ちかけた。ソフトバンクが過半出資し、プラットフォーマーをになう新会社をつくった。将来は自動運転EVで移動や物販を手がけるという。

 1937年、祖父の喜一郎らが豊田自動織機の自動車部を独立させてトヨタという会社ができた。そしていま、「モビリティーカンパニーにフルモデルチェンジすることが私の使命だ」と豊田はいう。創業にもひとしい大仕事が待ち受ける。=敬称略(竹山栄太郎)

大胆さ、創業家出身ならでは

 トヨタ自動車とパナソニックが、住宅事業統合へ――。5月9日の発表に、トヨタグループの間で衝撃が走った。グループの事業再編を前のめりで進めるトヨタだが、「住宅事業には、しばらく手をつけない」(グループ幹部)とみられていたからだ。

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