ベルリオーズ、日本オケ…名匠シャルル・デュトワが語る

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編集委員・吉田純子
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 没後150年を迎えたフランスの作曲家、エクトル・ベルリオーズ(1803~69)。代表作「幻想交響曲」の演奏が国内外で相次ぐなか、フランス音楽演奏に数々の金字塔を残し、「音の魔術師」の異名をとるスイスの名指揮者、シャルル・デュトワ(82)が大阪フィルハーモニー交響楽団を指揮した。「純粋に音だけで物語を描いた、史上初めての管弦楽曲」と自ら語る「幻想」を、いま聴く意味とは。

 4人の奏者がティンパニを一斉にたたき、世の終わりを告げるかのような鐘の音が舞台袖から鳴り渡る。シェークスピア女優への片思いの果ての脳内妄想の世界を、管弦楽の響きのみで徹底して描き抜く「幻想」。1830年、ベートーベンの「第九」初演からわずか6年後、現代にも通じる新たな響きの地平を切り開き、かのバーンスタインに「史上最高にサイケデリックな交響曲」と呼ばれたベルリオーズ26歳の時の野心作だ。デュトワの指揮で5月24日、大阪・フェスティバルホールで聴いた。

 肩をふいにすくめて楽員を挑発し、前のめりのアクセントを引き出すなど、音楽の細胞を隅々まで見せるデュトワの若々しいウィットの表現は82歳の今も変わらない。舞踏会のシーンを表現する第2楽章では、弦楽器の弓の上げ下げとデュトワのエレガントな腕の動きがシンクロし、全員がステップを踏みながら大きな渦へと巻き込まれてゆくかのような錯覚に陥った。

 ベルリオーズについて、デュトワはこう語る。「絢爛(けんらん)な響きから、ロマン派やワーグナーとの関連で語られることが多いが、実はベートーベンと同時代の古典派の人だった。どれほどの革命家だったか、わかっていただけますよね」

 その本懐を「ドイツやイタリ…

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