野村社員の漏洩、金融庁が重大視「インサイダーに匹敵」

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山口博敬 鈴木友里子 高橋克典 吉田拓史
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 金融庁は28日、野村ホールディングス(HD)と野村証券に、金融商品取引法に基づく業務改善命令を出した。東京証券取引所の市場区分見直しに関する内部情報を社員が漏らした行為を「インサイダー取引に匹敵する不適切行為」と重大視。野村が24日に決めた社内処分の見直しの必要性に触れ、経営責任の明確化を求めた。

 金融庁などによると、野村の社員らは東証の市場再編で生まれる新市場の上場基準の情報をもとに、機関投資家ら33の顧客に取引を持ちかけた。一部顧客には株価に影響が出そうな銘柄の一覧も添えた。

 この情報は、野村グループの社員が委員を務める東証の有識者懇談会内部の「重要な情報」だった。金融庁は一連の行為を「早耳情報を利用した営業行為」と認定。「資本市場の公正性・公平性に対する信頼性を著しく損ないかねない行為」と指摘した。

 野村は2012年にも公募増資を巡るインサイダー取引で業務改善命令を受けた。金融庁は「(今回も)類似性が認められる」と指摘。従業員の意識調査では「今回の行為は問題ない」との声もあり、「証券会社の社員に求められるコンプライアンス(法令や社会規範の順守)意識が欠如している。業務運営の改善は不十分」との判断を下した。

 一方で、漏らした内容が個別企業の情報ではないため、金融庁は「(現行法では)インサイダー情報にあたらない」(幹部)としている。野村からは「漏れた情報をもとに実際に売買がおこなわれた経緯はなく、株価にも変化はない」との報告を受け、不適切な情報漏れを防ぐ新たな罰則付きルールを今後考える。

 野村は先週、永井浩二グループ最高経営責任者(CEO)の役員報酬を30%(3カ月間)減額する処分を発表した。金融庁は改善命令で「経営陣を含む責任の所在の明確化」を求め、6月4日までに改善計画の提出を求めた。「『明確化』とは(減給など)いまの処分で十分かどうかを検証してほしいという意味だ。トップの経営責任は指名委員会など社内で検討されるべきこと」(幹部)として、監視を強める考えだ。(山口博敬、鈴木友里子

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