進まぬ拉致問題解決、首脳会談も見えず 日朝合意5年

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鬼原民幸 二階堂友紀
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 北朝鮮が拉致被害者らの調査を約束した日朝の「ストックホルム合意」発表から29日で5年になる。核実験や弾道ミサイル発射で日本が2016年に独自制裁を強化し、北朝鮮は特別調査委員会の解体を宣言。事実上空文化しており、安倍晋三首相日朝平壌宣言をてこに日朝首脳会談の実現をめざしている。

ストックホルム合意 スウェーデンの首都ストックホルムで2014年に日朝政府間協議による合意文書。北朝鮮は1945年前後に北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨及び墓地、残留日本人、日本人配偶者、拉致被害者及び行方不明者を含む全ての日本人に関する調査を実施。特別調査委員会の設置を盛り込んだ。日本側は調査開始時点で独自制裁を解除するとした。

 ストックホルム合意は、拉致問題を「解決済み」としていた北朝鮮に再調査を認めさせた。菅義偉官房長官は28日の記者会見で「固く閉ざされていた交渉の扉を開き、北朝鮮に拉致被害者をはじめとする日本人に関する全ての問題を解決する意思を表明させた点で有意義であった」とした。

 ストックホルムで日本側と交渉に当たった北朝鮮の代表団の一人は当時、拉致被害者の家族からの信頼が厚い安倍政権だからこそ拉致問題を解決できるとの見方を示していた。日本政府が調査の見返りに独自制裁の一部を解除したため、米国などから不信を買ったものの、拉致問題解決への期待は広がった。

 ただ、16年に北朝鮮が合意に基づく特別調査委の解体を宣言してからは、拉致問題に大きな進展はない。日本側の代表として交渉した伊原純一・元外務省アジア大洋州局長は今月、朝日新聞の取材に「北朝鮮が調査に合意したにもかかわらず、拉致問題は解決していない。非常に残念だ」と語った。

 日本政府は、現在も合意は有効との立場を変えていない。河野太郎外相は28日の会見で「北朝鮮に対して合意の履行を引き続き求めてまいりたい」と述べた。

 一方で、首相官邸幹部は、特別調査委の解体を念頭に「合意の本質的な部分はすでに無くなっている」と指摘。ストックホルム合意にこだわっても進展は望めないとの認識を示す。

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■日朝首脳会談「めどが立って…

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