「テロリスト」は英雄か 服役囚に給付金、遺族の憤り

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エルサレム=高野遼
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 イスラエルへの「テロ行為」の犯人やその家族に対するパレスチナ自治政府の支払金が問題となっている。イスラエルは「テロを助長する」と反対するが、パレスチナは「違法な占領と闘った英雄への支払いだ」と譲らない。(エルサレム=高野遼)

 5月15日、イスラエル人の男性がツイッターに動画を投稿した。

 「私の父は76歳でパレスチナ人のテロリストに殺されました」

 そう語るマイカ・アブニさん(49)は札束の山を前に続ける。「パレスチナは父を殺したテロリストにこんなに金を払っている。どう平和につながるのか。誰か説明してくれませんか」

 アブニさんの父リチャードさんは2015年、エルサレムでバスに乗車中、2人組のパレスチナ人に襲われて命を落とした。平和を求め、イスラエル、パレスチナ双方の子供に英語を教える学校の校長だった。

 アブニさんは、父を襲った犯人や家族にパレスチナ自治政府から毎月お金が支払われていることを知った。「テロの連鎖を引き起こすだけじゃないか」と考え、社会に訴え始めた。

 自治政府は「占領に対する闘い」で捕まったり死傷したりした市民や家族に支払金を出すことを定めている。囚人の場合、月額1400シェケル(約4万2千円)から始まり、収容が30年を超えると1万2千シェケル(約36万円)になる。釈放後の就職までの間の支援金もある。

 動画はイスラエルや米国などで多くの賛同を得た。アブニさんは言う。「パレスチナは争いではなく、命を尊ぶことを大切にして欲しい。政治的な問題の解決は、それからだと思う」

犯人の遺族「私たちも被害者」

 アブニさんの父を殺したとされる2人のうち、1人はその場で死亡、1人は服役中という。死亡した男性(当時21)の父を東エルサレムに訪ねた。

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 「私たちも被害者なんです」…

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