聞き手・笠井哲也
拡大する 財務省庁舎=2018年3月
政府が自国通貨建ての借金をいくら増やしても財政破綻(はたん)せず、インフレはコントロールできる。もっと借金して財政出動すべきだ――。そんな過激な主張のアメリカ発の経済理論「MMT」(Modern Monetary Theory=現代金融理論、現代貨幣理論)。米国では経済学者を巻き込んだ大論争となり、日本でも議論を巻き起こしている。
MMTの提唱者の一人、ニューヨーク州立大のステファニー・ケルトン教授は、政府債務が先進国で最悪の水準の日本でも、金融緩和で超低金利が続いていることが、「MMTのいい例証だ」と言う。主流派の経済学者からは異端視され、政策当局者からも「日本を(MMTの)実験場にする考え方を今持っているわけではない」(麻生太郎財務相)「MMTの考えているようなことをやっているということは全くない」(黒田東彦(はるひこ)・日本銀行総裁)と否定的な見方が出るような主張がなぜ今、注目されるのか。
10月の消費増税を控え、景気や財政への関心が高まる中、国会でも議論が活発だ。最近の国会質疑で論戦を繰り広げた西田昌司(しょうじ)(自民)、大門実紀史(みきし)(共産)両参院議員と、元日銀審議委員の木内登英(たかひで)・野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストに、MMTに関する見方を聞いた。(聞き手・笠井哲也)
――MMTが日本でも議論される背景は。
「最近の世界経済は減速し、国内の景気も落ち込んでいる。ここで消費税を上げるわけにはいかない。積極的に財政出動しなければならない。ところが財務省はこれ以上の財政支出をすれば破綻(はたん)すると言う。今は民間にも家計にも貯蓄があるが、高齢化で貯蓄を取り崩すしかない。そうすると国債の消化ができなくなる、と財務省は言う。これはウソだ。このウソを正すために我々はMMTに賛同している」
――ウソ…