健康被害の相談、学会が医療機関に伝達 患者の同意得ず

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富田洸平
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 美容外科クリニックの医師らによる日本美容外科学会(JSAS、東京都大田区)が、患者から健康被害などの相談を受けた際、患者の同意を得ずに相談内容を施術したクリニックに伝えていたことがわかった。昨秋、患者から苦情を受け、やめたという。専門家は、同意を得ずクリニックに相談内容を伝えたのは個人情報保護法に抵触する可能性があると指摘する。

 JSASは2013年、美容外科クリニックで施術を受けた患者からの無料相談をウェブサイトで始めた。氏名、住所、年齢、クリニック名、医師名、施術部位、メールアドレスと相談内容を記入して送信すると、美容医療に精通した相談員らが答えるとしていた。

 JSASによると、相談は年間約100件あり、内容は施術後の痛みなど健康上の問題や医師の態度、料金に対する苦情など。相談が届くと、事務局は氏名と住所を除いて数人の理事に転送。理事はクリニックへの指導が必要と判断した場合、患者の同意を得ずにクリニック側に相談内容を伝えていた。また、施術したクリニックの医師が理事として相談を閲覧するケースもあった。クリニック側が相談内容を把握した総件数は分からないという。サイトには個人情報管理規定があるが、相談のデータは学会が保有するとだけ記載され、クリニック側に伝える旨の記載はなかった。

 昨秋、事務局に「学会に相談したら担当の医師に怒られた。個人情報を伝えないで欲しい」との匿名の電話があった。個人情報保護法に抵触する可能性があるとの弁護士の指摘もあり、昨年11月からクリニックに伝えることをやめ、理事が回答するだけにした。事務局は相談業務について、「健康上のトラブルなどに回答し、クレームを受けたクリニックに改善を求めるために始めた。住所・氏名を隠せば個人情報にあたらないと考えていた。認識が甘かった」と話した。

 保志名勝理事長(ノエル銀座クリニック院長)は「今回の指摘を真摯(しんし)に受け止め、相談者の個人情報の記載をなくすなど、個人情報のさらなる保護と安心して相談できる形にするよう努めたい」とコメント。現在はメールアドレスと氏名かニックネームを記入すれば相談を受け付けている。

 個人情報の保護に詳しい新潟大の鈴木正朝教授(情報法)は「名前と住所を伏せても個人が識別できれば法律上の個人情報にあたり、JSASの取り扱いは極めてずさんだ。患者のトラブルの相手がどのように情報を使うかを考えずに漫然と伝えており、深く反省すべきだ」と話す。

 JSASは美容外科クリニックの医師ら958人が所属する。形成外科医らによる日本美容外科学会(JSAPS)とは別団体。

 この問題は、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の医療機器をめぐる報道プロジェクトを取材する中で明らかになった。

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