【科学力】

 高齢化や地球温暖化といった社会や経済の課題解決につながる技術を生み出す「イノベーション」。日本はその力が弱いとされる。日本の科学力の低落傾向の一端を示すものだ。その中で、イノベーションをめざし、独立の道を志す企業の若手研究者もいる。ベンチャー精神あふれる起業家は、エサを求めて最初に海に飛び込む勇気あるペンギンに例えて「ファーストペンギン」と呼ばれる。企業の枠を超えようとするファーストペンギンを支える動きが出てきた。

研究職社員のままでチャレンジ

 京都市の京都大の近くに6月、会社に在籍しながら起業を目指す若手を支援する施設がオープンする。企業研究者が対象の起業支援は珍しい。

 運営するのは新規事業創出支援などを手がける「フェニクシー」(京都市)。創業メンバーで起業家の久能祐子(くのさちこ)さんが米国で手がける社会起業家育成施設「ハルシオン・インキュベーター」は創設5年で100億円の投資を集めた。そのノウハウを導入し、「世界を変えるイノベーションを京都から」と、支援プログラムを立ち上げた。

 町家風の施設は個室のほか仕事場として利用できる共用のスペースや調理場などを備える。大手企業7社の若手研究者9人が選ばれ、4カ月間泊まり込みで起業の準備に取り組む。テーマが違う事業に挑む参加者が交流しながらアイデアを磨くほか、京都大の教員などスタートアップ支援の経験が豊富なメンター(助言者)が付き、具体的な計画を描き、投資家を探すという。

 参加を予定するダイキン工業の小泉美子さん(38)は、理化学研究所の研究員などを経て同社に入った。フッ素樹脂などを研究中、再生医療に使えるかもしれない細胞培養の技術を発見した。会社はほとんど医療関連事業を手がけておらず、社内での事業化はハードルが高かった。会社を飛び出すのもリスクが高いと考えていたところ、社員として給与をもらいながら起業に挑戦できることを知り、応募した。

 送り出す企業はフェニクシーに…

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