片道4時間に手軽な国いっぱい 企業の熱い思い、沖縄へ

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伊藤和行
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 日本への復帰から47年となった沖縄に、アジアのビジネスマンから熱視線が注がれている。好調な経済や「メイド・イン・ジャパン」の付加価値を動機に、サービス業や製造業の進出が増加。沖縄県も、アジアとの交易が自立経済の要になるとみて後押しする。

 国際通りに近い那覇市内の雑居ビルの一室に入ると、あちこちから中国語が聞こえてきた。約80平方メートルの事務所が五つに仕切られ、30~40代の中国の起業家が事務所として使っている。

 大学時代に沖縄に留学し、その後、移住して那覇市で貿易会社を営んできた方徳輝(ほうとくき)さん(46)が2017年6月に開いた。方さんは「沖縄はこれからもインバウンド効果が期待できる。中国のベンチャー企業家を呼んで、一緒にビジネスチャンスをつかみたかった」と話す。

 約10人が民泊業やマリンレジャー業などを起業してきた。その一人、昨年5月に貿易会社を起こした福建省出身の何守成(かしゅせい)さん(38)は「アジアに近く、我々にとって日本の玄関口でもある沖縄は交易の可能性にあふれる」と沖縄で起業した理由を語った。

 沖縄では、一定の条件で国内外の企業が法人税を40%控除される経済特区や、初期投資への県からの助成といった優遇制度もあり、16年に台湾の自動車部品製造業者がうるま市に進出。17年にはベトナムの大手IT企業が那覇市に現地法人を設立した。

 公益財団法人「県産業振興公社」は16年10月に外国企業専用の相談窓口を設置。約2年半で285社から視察などの相談があった。台湾や中国、香港、シンガポールなど、大半がアジアの製造業者やサービス業者だ。

 沖縄進出をめざす需要があるとして、琉球銀行は昨年4月から行員を台湾に常駐させた。IT企業などが沖縄で起業したという。法人事業部の本永和志次長は「メイド・イン・ジャパンの価値を求めたり、日本進出の足がかりと考えたりする企業が多い」と話す。

 琉球王国時代、中国やタイなどとの交流で繁栄した沖縄。12年に始まった第5次沖縄振興計画では「アジアとともに発展する」とうたい、自立経済構築のため、那覇空港の国際物流ハブ機能の強化などに力を入れてきた。

 県も誘致を全面的に後押しする。4月に日本国際貿易促進協会に同行して訪中した玉城デニー知事は、胡(フー)春(チュン)華(ホワ)副首相に「沖縄を『一帯一路』の玄関口として活用してほしい」と要請。胡副首相は「その考えに賛同する」と応じたという。同席した経済人は「中国の企業は当局の方向性に沿ってビジネスを進める。これからどんどん増えるだろう」と話す。

 アジアから相次ぐ「ライバル」の進出だが、沖縄経済同友会の渕辺美紀代表幹事は「競争で危機感を持つ地元企業もあるが、互いに努力をしながら沖縄経済の成長につなげていきたい」と話す。

 成功しなかった例もある。「…

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