慶大教授は問う「中国のデータ国家主義は悪いだけか」

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聞き手=大津智義
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 国家が主導して、膨大な個人データを収集・活用して社会を改革しようという中国。海を隔てた日本では、不気味と見る向きも多い。しかし、医療政策が専門の宮田裕章・慶応大教授は、そんな固定的な見方に異を唱えている。どういうことなのだろうか。

 ――中国では、IT大手アリババグループの子会社が始めたゴマ信用を始め、個人を評価する信用スコアが社会の隅々まで浸透しています。

 信用スコアについてはこれまで、交通ルール違反や借りたお金を返さないなどの減点法で行われてきました。ゴマ信用は、これらの情報を多元的に組み合わせるだけでなく、加点方式による評価を組み込んでいます。

 例えば「低炭素行動」です。ガソリン車を使わないで自転車や電気自動車で通勤したら点がプラスされる。またゴミを適切に分別して廃棄することを評価することにより、人々の善行を引き出す、という地域もあります。このような評価も踏まえて可視化されるゴマ信用は、無担保で融資を受けることができる金額だけでなく、時に子どもの進学先にも影響するというんです。

 そうなると、お金を持っていないが信用の高い人も、いい大学に行けるということが起こります。信用スコアが貨幣を超えるような価値になるのではないか、ということに注目しています。

スコアが貨幣の代わりになる

 ――そんなことが本当に起きるのでしょうか。

 今まではお金より大事なものがあると言っても、客観的な形として共有することは困難で、社会活動は貨幣を主軸に成り立っていました。これからはスコアを通じてさまざまな価値を交換できるようになります。

 ポスト資本主義の大きな流れが中国から始まりつつあるのかもしれない、と思っています。

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 ――貨幣を代替する役割をス…

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