「マイナーな食文化」守り半世紀 鯨料理の老舗が閉店

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本多由佳
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 大阪・千日前の老舗鯨料理店「徳家(とくや)」(大阪市中央区)が25日、閉店する。捕鯨への逆風の中、名物おかみの大西睦子(むつこ)さん(76)は「庶民の鯨食文化を後世につなげたい」と力を注いできたが、日本近海で約30年ぶりに商業捕鯨が再開される節目に、半世紀守ってきたのれんを下ろす。

 閉店を間近に控えた21日夜。満席のテーブルからは鯨肉とたっぷりの水菜が入った名物「ハリハリ鍋」の湯気が何本も上がっていた。「ありがとね」。かっぽう着姿の大西さんは山盛りの皿をテーブルに運び、客らに声をかけて回った。

 鯨食文化を楽しんでもらう雰囲気づくりのため、店内の壁面のタイルには日本の古式捕鯨の様子などが描かれ、皿やコースターにも鯨のイラストが施されている。30年来の常連という輸入車販売会社会長の吉田尚司さん(80)は「胃もたれせず、懐かしい味が魅力だった」と名残を惜しむ。

 創業は1967年。大西さんが魚屋の次男と結婚したのを機に、当初はフグ料理を出していたが、競合店が多く、家庭料理だった鯨に注目した。鯨肉は、低カロリーながらたんぱく質を多く含み、骨やひげまで捨てずに使える。「いろんな部位を工夫して、安くてうまい料理に仕上げるのが大阪文化」と当時を振り返る。今では1人前3600円(税抜き)のハリハリ鍋も、当時は400円で提供していた。

 60年代、鯨肉は「食卓の主…

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