虐待認定すると…1年で養子縁組 海外は子どもどう守る

有料記事

聞き手・遠藤雄司
[PR]

 千葉県野田市の小学4年、栗原心愛(みあ)さんが虐待死した事件で、両親による虐待が疑われた心愛さんを柏児童相談所が一時保護しながら自宅に帰したことに批判が集まりました。児童虐待の件数が多い一方で、対策の「先進国」と言われるアメリカでは、子どもをどのように守っているのでしょうか。日米仏の児童保護システムや家庭支援について研究している神戸女子短大の畠山由佳子准教授(児童福祉)に聞きました。

 ――アメリカの児童虐待対策について教えて下さい。

 アメリカで児童虐待防止法が制定されたのは1974年です。日本は2000年とかなり遅れました。ただ、具体的な決まりは州ごとに異なるのが大前提です。私が1997年から3年余り滞在したイリノイ州の話を中心にお話しします。

 虐待を目撃した人はまず児童虐待専用のホットラインに電話をします。イリノイ州の場合はすべて州の児童家庭局中央データ登録センターにつながります。日本は重大な事案を見過ごすことを避けようと児童相談所に通報が入った事案は原則すべて確認をしますが、アメリカは通報の半分ほどが受理されません。全米で年間400万件超の通報があり、明らかに虐待と言えない事案まで調査をしていられない事情もあるようです。

 ――受理しないということは、対応しないでしょうか。

 受理しないのは子どもに具体的な危険が迫っていないと判断できる場合です。たとえば、「小さい子どもがいるのに、母親が酒に酔っている」という通報は、それだけでは対応しません。ただ、受理した事案は原則として24時間以内に虐待をされた可能性のある子どもに直接会います。

 この調査官は、一時保護の権限を持つ上に、守秘義務のある医者や教師などを相手に話を聞くことができます。虐待があったのか無かったのか、その事実認定の追及に重きを置いていて、60日以内に結論を出します。子どもに危険性があるときは一時保護をします。

 ――日本では児童相談所が一時保護している時に、親に子どもを帰せと圧力をかけられて、親元に戻してしまったが故に悲しい事件につながったケースがあります。米国では同じような問題は起きないのでしょうか。

 イリノイ州では一時保護の期間は48時間と定められています。そのため、当局は同時に裁判所に親権の一時停止を認めてもらう手続きに入ることが多いです。親権が一時停止されてしまうと、親が子どもを家に戻してほしければ裁判所に提訴するしかありません。

 ――虐待と認定されればどうなりますか?

 支援が必要とされた場合、その3分の2のケースが在宅支援になり、残りの3分の1は子どもを親から引き離します。そのうち約9割を資格を持った里親に預けるため、大半が施設に入る日本とは対照的です。その後、12~15カ月以内に家庭復帰ができないと判断された場合は原則、子どもに対する養子縁組のプロセスが始まります。

 ――12カ月で養子縁組というのは厳し過ぎませんか。

 もちろん元の家庭に帰れることがベストですが、子どもに「ずっと離れなくていい家庭」を早く用意してあげる狙いがあります。もちろん、家族の元での在宅支援にも力を入れています。親に対してカウンセリングをしたり、薬物中毒者の場合はリハビリ施設に通ったりしてもらいます。

 ただ、支援もしますが子どもの安全確認も厳しくします。私はイリノイ州で在宅支援ワーカーも経験しましたが、支援家庭を毎週訪問しましたし、隔週でアポ無し訪問もしていました。訪問の際は子どもの体を確認しますし、薬物中毒の親の場合は尿検査もしました。子どもに会えなければ、裁判所を通じて法的な対応に出ます。

ここから続き

 ――アメリカでは留守番やお…

この記事は有料記事です。残り652文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら