原子力学ぶリケ女の家庭内不和と、聞く耳持たぬ人たち

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編集委員・大月規義
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経世彩民 大月規義の目

 福井市に住む大学4年生、中武真穂さん(21)は10連休を前に気が重かった。法事のため、兵庫県の実家に帰省する。そこで、父方の祖母と顔を合わせなければならない。

 「また、おんなじことを聞かれ、おんなじことを言わなくちゃいけないのかあ」

経済という言葉の語源「経世済民」には「世をおさめ、民をすくう」という意味があります。新コラム「経世彩民」では、記者が日々の取材を経て思うこと、伝えたいことを色とりどりの視点でつづっていきます。原則、毎週火曜朝に配信します。

 中武さんは福井工業大学で原子力工学を専攻している。受験のときから祖母は猛反対だった。「女の子なんだから大学にいかんでいいし、まして原子力なんて」。両親にもあたった。「親の育て方が悪いからやないか」

 この正月に中武さんが帰省したときも、「(原発は)危なくないの?」と聞かれた。母方の祖母からも「エネルギーなら火力でいいんじゃないの」と言われた。孫を哀れみ、かつては涙ぐまれることもあった。

「科学的じゃないので説明できない」

 いつも同じ質問に、中武さんの口調は強くなる。

 「どういう視点から危ないというの? 確率? 安心か安心じゃないかというのは科学じゃないので、私には説明できません」。そして険悪な空気のまま、福井に戻る。

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 進学のきっかけは兵庫県立太…

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