嫌な上司は「敬してこれを…」 会社の不条理と向き合う流儀

有料記事カイシャで生きる

古屋聡一
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 財務分析、経営論、人生論など、ビジネス書分野での著書は144冊。累計販売数は375万部を超えた。有名経営コンサルタントの小宮一慶さん(61)も、かつては一銀行員だった。

キョウジュ

 小宮さんは大学卒業後、海外での仕事にあこがれて、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入った。

 職場の上司を、部下たちは陰で「キョウジュ」と呼んでいた。「教授」という意味ではない。過大な仕事を指示し、「今日中に」といつも念を押してくるような上司だった。今だったら「パワハラ」と言われるかもしれない。

 〈なんて嫌な人なんだ〉

 小宮さんのストレスはたまる一方だった。「嫌な人」だとは思うが、その上司のどこが間違っているのか、どうやって対応すべきなのか、若い小宮さんには、わからなかった。

 わからないなら、過去に生きていた人たちから学ぼうと思った。

 本屋を訪ね、論語や仏教などの古典を大量に買って読みあさった。

 人間は2千年以上前から、生きることの苦悩を抱えていた。古典には「人生の指針」がたくさん詰まっていた。

 上司との向き合い方で参考になったのは、論語にあったこんな言葉だ。

 「敬してこれを遠ざく」

組織の歯車として一日一日を懸命に生きる。ときに理不尽な人事や処遇に苦しんだり、組織と決別して新しい人生を歩むことを考えたり。さまざまな境遇や葛藤を経験しつつ、前に進もうとする人々の物語を紡ぎます。

 まったく尊敬できない人とはいえ、上司だから礼を失してはいけない。でも、迎合したり、言いなりになったりしたらだめだ。適度な距離を置こう。そう考えた。口うるさい上司の言葉がさほど気にならなくなった。

 おごり、嫉妬、うらみ………

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