うどん自販機、社長の最後の一台 調理も修理も職人芸

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大崎浩義
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 鹿児島県南さつま市中心部から国道226号を西へ車で約10分。田畑が広がる同市加世田小湊の国道脇に、自動販売機コーナーが現れる。各種ある自販機のなかで、ひときわ年季の入ったたたずまいを見せるのがうどんの自販機だ。設置から約40年。新時代を迎えた今も「昭和」の香りを漂わす。県外からの客もおり、レトロ感も味わいの一つのようだ。

 「うどん そば 自販機コーナー」。白いテント地にそう書かれたコーナーには、スナック菓子や飲料水など計8台が立ち並ぶ。その中央で、さびが目立ち、色あせたのがうどんの自販機だ。

 正式名は「めん類自動調理販売機」。乾麺に湯を注ぐタイプではない。あらかじめ器にゆで麺や天ぷら、さつま揚げなどがセットされ、硬貨を入れると自動的に湯を注いで麺を温める。そして脱水機のように高速回転させて「湯切り」し、最後に温かいだしが注がれ、取り出し口から出てくるという仕組みだ。

 この間、約25秒。器にどんな麺や具材をセットするのかは自販機の設置者に委ねられる。まさにその名の通り、「調理」の要素を盛り込んだ自販機だ。

 自販機コーナーの裏手にある「調理」担当、製麺店「阿久根商店」の前田昌作社長によれば、うどんの自販機を設置したのは1978(昭和53)年ごろという。県内の日置市や南さつま市など計6カ所に設置したが、使い込むうちに故障が相次いだ。やがて製造元の東京都内のメーカーも製造を終了。最後の一台になった。全国的にも珍しいらしく、県外から食べに来る常連もいるという。

 1日に50~100食ほど売れ、朝、昼、夜と補充しないと売り切れる。本業の麺はもちろん、天ぷらなども自家製にこだわる。

 「この一台もとっくに使えないはずだが、故障した自動販売機から使える部品をあちこち臓器移植して生きている。6台もあったおかげ」と前田社長。

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 硬貨を認識して自販機を作動…

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