突然の心停止「対応2分遅ければ」 「備え」が救った命

有料記事学校の死角

加藤あず佐 北林晃治
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 予期せぬ病気の発症により、子どもが亡くなる突然死。多くは心臓病が原因で、学校ではかつて年間50~80件ほど起きていたが、学校に自動体外式除細動器(AED)が普及するようになったことなどで、近年は20~30件に減っている。それでも、学校での死亡事故の3割を占めている。

 日本スポーツ振興センター(JSC)の学校事故データでは、2016年度までの10年間で318件の突然死が起きていた。産業技術総合研究所の分析では、半数ほどが心臓病によるもので、多くが持久走や球技などの運動中やその直後だった。15年10月には、埼玉県の高校2年女子が長距離を歩くなどする学校行事で倒れて翌日死亡。16年5月には、大分県の中学3年男子が体力測定のシャトルラン中に倒れ、2日後に死亡した。

 小中学校での心停止の半数は、心臓に持病のない生徒に起きており、事前の予測は難しいという。心停止後、AEDの使用が1分遅れるごとに救命率は10%ずつ下がるため、日本AED財団専務理事の石見(いわみ)拓・京都大教授(蘇生科学)は「最初の数分が重要で1分1秒を争う。シミュレーション訓練などで準備をすれば、救える命は増える」という。

 生徒や先生がためらわずに動いたことで、仲間の命をつないだ事例がある。

 昨年1月、沖縄県浦添市の県立浦添商高3年(当時)の外間匠(ほかま・たくみ)さん(20)は体育の補習の持久走後に倒れた。陸上部だった外間さんは快調に走り出したが、最後の3キロはどうやって走ったか覚えていない。ゴール後に座り込み、倒れた。

 近くにいた多和田竜真さん(19)が声をかけても反応はなく、しゃくり上げる呼吸をしていた。異変に気づいて近くの先生に知らせ、別の生徒が胸骨圧迫(心臓マッサージ)を実施。その後、体育教諭の宮里清さん(42)がAEDを運んできた生徒と駆けつけた。電気ショックを加えると、顔色が戻った。その後も心臓マッサージを続け、救急隊到着時には呼吸と心拍が回復した。約10分間の出来事だった。

 夜、意識が戻った外間さんは医師から、心臓がけいれんする「特発性心室細動」で、対応が2分遅かったら死んでいたと言われた。激しい運動はできないが、生活に支障はなく、今は大学でマーケティングを学ぶ。「みんなに助けてもらって今がある」

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