足してもダメなら引いてみな(小原篤のアニマゲ丼)

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 原恵一監督最新作「バースデー・ワンダーランド」(公開中)を見終わって第一の感想は「うーん、困ったな……」でした。正直あっさりし過ぎに感じて、もっとこっちの心にグイッと入ってきて欲しかったと思いながらも、隅々まできっちり作られていて、監督の「やりきった」感がビシビシ伝わってくる。このズレはどうしたらいいのか? 実際、マスコミ向け試写でもらったプレスには「型にはまらない新しい映画、すごい映画ができました。自信作です」とコメントが。もうこれは原監督に聞くしかない、そう腹をくくって、インタビューに臨みました。あ、ネタバレありです。

 柏葉幸子さんの児童文学が原作としてありますが、実質は映画オリジナル。12歳の誕生日を迎えた主人公アカネが、叔母チィの営む骨董(こっとう)屋の地下室から現れた謎の錬金術師ヒポクラテスと弟子ピポから「危機に瀕(ひん)した私たちの世界を救えるのはあなたしかいない」と言われ半ば強引に異世界へ。まん丸ヒツジをモフモフし、広大な花畑に見とれ、巨大な金魚の背中に乗り……。めくるめくワンダーランドに、好奇心旺盛なチィがはしゃぐ一方、自分に自信がないアカネは「無理! 私帰る!」。水が涸(か)れつつある世界を救うカギは、大事な「しずく切りの儀式」を王家の者が行う「時なし雨の井戸」。それを破壊しようとする無法者ザン・グとアカネらは対峙(たいじ)することになるが……。

 私がひっかかったのは主に二つ。一つ目は、アカネに動機と葛藤が乏しいこと。「ミッションを達成しないと元の世界に戻れなくなる」とか「一緒に異世界に来た大切な人が敵の手に落ちた」とか「異世界に来て仲良くなった人たちがピンチに!」といった動機を持たせて、「帰りたい」「怖い」といった気持ちとの葛藤を作るというのがよくある手ですが、本作はそれが明確でない(いちおうケイトウの村の手編みのセーターというのがありますが)ため、アカネの異世界巡りがどこかアトラクションツアーっぽく感じられるのです。もう一つは、ラストの「別れ」が意外なほどアッサリしていること。

 では、原監督のお話をどうぞ…

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