「1分でも長生きする健康術」 出版した医師が語る事情

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聞き手・服部尚
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 がんなどの病気の痛みや悩みを和らげる緩和ケア終末期のイメージを持つ方もいるかもしれませんが、いま、治療を支えて効果を上げるため、早期からの緩和ケアが推奨されています。全国でも珍しい早期緩和ケア専門のクリニックを昨夏開設した、医師の大津秀一さんが「1分でも長生きする健康術」(光文社)を出版しました。患者への指南書だという、1冊の本に込めた思いとは?

――なぜ緩和ケアが重要なのですか?

 緩和ケアは治療ではなく、終末期のケアというイメージが強いかもしれません。しかし近年、がん患者で早期から緩和ケアを併用した場合に生存期間が延びるという論文が発表されるなど、治療としての側面も見直されています。緩和ケアは単に苦しみを和らげるためだけではなく、生活の質を上げることや生存期間の延長まで期待できるようになっています。

――早期緩和クリニックを開こうと思われた理由は

 東邦大学病院で8年間、緩和ケアに取り組み、院内から早期緩和ケアの依頼も来るようになりました。関わる医療者も増え、年間の新規患者は、各都道府県のがん拠点病院よりも多い300人を超えるまでになりました。

 一方で、10年前から続けている私のブログへの意見欄には、さまざまな地域から「緩和ケアにかかれない」という声も寄せられていました。また、早期緩和ケアのことを知ってもらうためにも、それを冠して専門で行うクリニックが必要なのではないかという思いが募りました。そこで、まだ支援が及んでいない人や地域を支えたいと、遠隔診療も利用できるクリニックの開設に踏み切りました。

緩和ケアの効果、さまざま

――具体的な緩和ケアの効果とは。

 以前に病院の外来で、抗がん剤治療がつらくて中止したいという進行乳がんの50代の女性に1時間泣かれて、その思いを傾聴したことがあります。うつ病もあると判断したので、うつの治療も進めました。次第に心身ともに改善され、好きなパチンコや温泉を楽しみ、長くふつうに暮らされました。

 卵巣にがんが見つかった20代の女性は、終末期の緩和ケアで外来に来られ、ご本人も理解されていました。肺に転移したがんは次第に大きくなり、がんを小さくする放射線治療を勧めました。すると「放射線治療は効かないと前の病院で言われた」と。治療としては効かなくても、症状を和らげる可能性があります。外来の短い診療時間では、そのような効果について教えてもらえる機会がなかったのでしょう。結局、症状の緩和どころか、がんは小さくなり、それを維持できるようになりました。

――「1分でも長生きする健康術」とは刺激的なタイトルですね。

 本当に知っておいてほしいと思うことを網羅したいと書きました。1分でも長生きするには医療や健康情報の上手な取捨選択が重要と考え、その方法をお伝えしています。それらを通して多くの方に長生きしてもらいたいですね。

――誤った情報を信じて、治療が進められない例もありますね。

 たとえば、大学病院時代にみ…

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