地上600mの特等席 クレーン運転手が撮り続けた上海

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宮嶋加菜子
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 建材をつり上げるクレーンの運転手として建築中の高層ビルのてっぺんで仕事をすること十数年。魏根生さん(64)は、一番高い場所から、この街の、この国の移り変わりを見つめてきた。

 上海・浦東新区。ライトアップされた東方明珠塔と摩天楼が織りなす幻想的な夜景は、発展する中国の象徴だ。その中で最も高いのが632メートルの「上海タワー」。魏さん最後の仕事場だった。

 上海生まれの魏さんは1975年、21歳の時に建設会社に就職し、クレーン運転の腕を磨いた。当時、高層ビルの仕事はなく、商業施設や住宅の建築が主な仕事だった。

 上海は街を流れる黄浦江で「浦西」と「浦東」に分かれる。80年代は「浦西の一つのベッドの方が浦東の一部屋よりまし」と言われるほど、浦東は辺鄙(へんぴ)な場所だった。魏さんはちょうどその頃、都市再開発で旧市街地の浦西の家が立ち退きになり、浦東に移り住んだ。夜は真っ暗闇。浦西へ行く渡し船は、天気が悪ければ欠航した。

 周りの景色が一気に変わったのは、90年に中国政府が上海・浦東の開発を決定してからのことだ。

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 91年、黄浦江をまたぐ巨大…

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