AI育てる「秘匿計算」 暗号化して企業顧客データ活用

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杉本崇
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 利用が広がる人工知能(AI)の開発に、企業がもつ膨大な顧客データを生かそうという動きが強まっている。プライバシーを保護しつつ、データを活用するための暗号化技術「秘匿(ひとく)計算」が注目されている。

 振り込め詐欺の新たな手口を、AIがいち早く検知する――。そんな将来に向けた実証実験を情報通信研究機構東京都小金井市)が始めている。カギになるのは、実験に参加する銀行それぞれの預金者の情報を暗号化したまま、AIの学習に役立てる「秘匿計算」と呼ばれる仕組みだ。

 千葉銀行は、この実験に手を挙げた。金融機能管理グループの海老原大介調査役は「参加しないことの不利益の方が大きい」と期待する。

 千葉銀では、振り込め詐欺の被害かもしれない取引が1日あたり数百件ある。例えば、ふだん大金を下ろさない高齢者が20万円をコンビニで引き出すといったものだ。これまではベテラン行員が取引内容を分析し、数百件の中から実際の被害を見つけ、追加の被害を減らしてきた。ただ、分析には時間がかかり、次々に出てくる新たな手口への対応も難しかった。

 警察庁によると、2018年の振り込め詐欺などの被害額は全国で357億円。ここ4年は減少傾向だが、それでも被害はなくならない。

 全国の銀行で日々行われる膨大な数の取引データを集めてAIで分析すれば、振り込め詐欺を検知する精度が上がる。地方の銀行で1日1、2件しか被害がなくても、高齢者による高額の振り込みが特定の時間帯で相次いでいるといった兆候を自動で見つけ出せると期待される。

 ただし、銀行は個人情報の取り扱いに関する規約上、預金者のデータを外部に持ち出したり、ほかの銀行と共有したりすることは難しい。

 そこで、個人情報を保護しつつ、データ共有する「秘匿計算」を活用する。参加する銀行は暗号化された取引情報だけを提供。AIが暗号化された状態のまま情報を分析し、振り込め詐欺の手口を学ぶ。万一、情報が流出しても、解読できないので悪用される心配は少ない。

 情報通信研究機構の盛合志帆セキュリティ基盤研究室長は「多くの銀行で取り組むことで、組織をまたいで多くの学習データが集められ、より正確に検知ができるようになるだろう」と話す。

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■暗号化したままデータ分析…

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