造語だらけの小説、でもすらすら読める 奇妙な世界観

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山崎聡
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 未知の言葉だらけにもかかわらず、不思議とすらすら読めてしまう。作家、酉島伝法(とりしまでんぽう)さんの新刊『宿借りの星』(東京創元社)は、そんな奇妙な体験へと読者をいざなう。独自の造語をふんだんに使って人類以後の意識を描き、日本SF大賞を受賞したデビュー作『皆勤の徒』から約6年。満を持して放つ初長編で、さらなる洗練を見せた。

 舞台は、かつて卑徒(ひと)を滅ぼした異形の殺戮(さつりく)生物たちが暮らす惑星。罪を犯して倶土(くに)を追われた主人公のマガンダラは、異種蘇倶(ぞく)の道連れとともに旅をしながら、彼らの日常が少しずつ変化していることに気づく。それは、静かなる奪還戦争の前ぶれだった――。

 冒頭から見たことのない造語が説明もなく並ぶ。それでも、漢字の意味や音がもたらすイメージに身を任せていれば、徐々に世界が像を結んでいく。「じわじわ造語が染み入って、いつの間にか普段から使っている言葉みたいに読めるよう、主人公と読者の神経を一本ずつつないでいくようにして書きました」

 あまたの造語でつづるのは…

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