子どもの貧困、どこで誰が 学校とタッグで支援、CMも

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中塚久美子
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 子どもの貧困対策法が施行されて5年。支援が広がる中、必要としている人にどう届けるのか、課題が見えてきました。自治体、学校、地域の取り組みを紹介します。

 「この地域での生活はひとり親でも安心感があり、本当に助かっています」。松江市古志原地区で、経済的に苦しい家庭に食品を無料で贈る「あったか元気便」を受け取った人の声だ。

 「元気便」は地元の公民館や農協、生協といった団体のグループが、市立古志原小学校を通じて利用者を募り、昨年夏にスタートした。団体の職員や組合員から現金や食料の寄付を受け、学校給食がない夏冬の長期休暇中に家庭を援助する。これまで3回、のべ84世帯291人に計約1トンの食べ物を届けた。

 ここ数年、子どもの貧困が社会の課題だと広く知られ、援助したいと考える人が増えた。だが、どこで、誰が困っているのか分からないことが活動のネックになっている。元気便の呼びかけ人の一人、古志原公民館長の竹谷強さん(76)は「学校を通じて知らせれば、必要としている人に届く」と考え、昨年4月、小学校に提案した。

 学校と相談し、利用を案内する対象は、学用品や給食費を補助する「就学援助」をすでに利用している世帯に限った。個別に経済状況を尋ねれば、プライバシーを侵害する恐れがあるからだ。また、食品を箱詰めするスタッフには、届け先の名前や住所といった個人情報を知らせない。

 市の福祉部や教育委員会には事前に説明した。「事業の必要性と、個人情報を守っていることを理解してもらえれば、同様の支援は各地でできる」と竹谷さん。近くの中学校からも依頼を受けており、今年度、対象に加えたいという。

 公的な支援制度があるのに、知らずに利用しそびれる人を「ゼロ」に――。沖縄県は2017年以降、3~4月に「就学援助」のテレビCMを約300回、流している。

 子どもの貧困対策を効果的に進めようと、県は小1、小5、中2の保護者を対象に実態調査をしている。15年度の調査では、就学援助を利用していない理由として、困窮家庭の約2割が制度を「知らなかった」と回答。周囲の目が気になり利用しづらいとの声もあった。この結果を受け、明るい雰囲気のアニメで制度を紹介するCMを作った。

 18年度の調査では、制度の利用率は各学年で15年度より上がり、小1の困窮層では49・8%と15ポイント増。制度を知ったきっかけは「学校からの通知」が約80%と最も多く、「市町村からの通知」「テレビやラジオのCM」と続いた。県の担当者は「CM効果で必要な人に支援が届き始めている。CMにも限界があるので、直接申請を働きかける施策も進めている」と話す。

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