母の乳がん、何も知らなかった 5年後の奇跡と私の運命
桑原紀彦
家路を急ぐ人波のなか、女性(32)はJR品川駅の改札前で上京してくる両親を待っていた。3日後が、妹の結婚を祝う食事会だった。
父(66)が姿を見せた。目を真っ赤に腫らしていた。母(57)は現れなかった。
「お母さんに何かあったの?」
「胸が、ちょっとな」
父は口ごもったままだった。駅ビルのレストランに入った。カウンターに並んで座ると、父はぽつりぽつり話し始めた。
2カ月前、母が突然、右胸の…
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