被災者の8割近く「不安」、経済面が最多 熊本地震3年

有料記事東日本大震災8年

神崎卓征 吉備彩日 清水優志
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 熊本地震から3年。地震発生後から毎年、朝日新聞のアンケートに協力している複数の被災者を追跡調査したところ、昨年より自宅再建が進んだことがうかがえる一方で、8割近くが不安や問題を抱えていた。行政に求める課題ではインフラの復旧と医療費の補助が最も多かった。

 2016年4月以降、アンケートに応じた約100人に3月下旬~4月上旬に電話取材し、63人から回答を得た。回答者は地震後の避難生活が1カ月以上に及んだ20代~80代以上で、平均年齢は57・8歳だった。

 再建した自宅も含め自身の家に住んでいる人は34人(54%)で、昨年(30%)より割合が増えた。仮住まいが続く人のうち13人(45%)が、自宅再建中や再建の予定があると答えた。

 一方で、48人(76%)が現在も何らかの不安や問題を抱えていると回答。具体的な内容を複数回答で問うと「収入や借金など経済的なこと」(28人)が最も多く、次いで「自分や家族の健康」(17人)だった。孤独感など「精神的な悩み」をあげた人も12人いた。

 行政への要望で最も多かったのは道路や橋、鉄道などの「インフラの復旧」と「医療費の補助」で各27%。医療費補助をあげたのは全員50代以上だった。次いで「自宅再建の資金支援」が25%だった。

 年代によって生活再建の受け止め方に差があることもうかがえた。生活再建の度合いを1から100までの数値で表してもらったところ、平均値は66(前回53)だったが、60代以上は70で、50代以下は61だった。100と答えた人は11人いたが、40代以下にはいなかった。(神崎卓征)

被災者励ましたスナック

 熊本市東区のスナック「飲み処 秀子」。店に入ると、ママの松岡ヒデヨさん(68)がニコニコしながら小鉢を次々と出してくれる。「つんむきいも」と呼ぶ小さな里芋や有明海のコノシロの酢みそあえなど、いずれも熊本へのあつい思いが込められている。

 この日の客は1人。平日は誰も来ない日もある。「あの日ですっかり変わってしまった」とため息をつく。

 地震から2カ月後、自宅屋根の修理も終わらぬまま、客に励まされ店を再開した。「みんなに元気を出してもらいたい」との一心だった。口に出せぬ不安や復興へのいらだちや寂しさをはきだし、店で歌うことで、多くの客が希望を取り戻す。その姿に松岡さん自身が力をもらってきた。

 地震は客の人生を大きく狂わせた。グループでよく飲みに来てくれた60代男性は家の下敷きになり亡くなった。「関西に住む娘を頼る」と言って熊本を去った客や、店から離れた仮設住宅に移り足が遠のいた客、家の再建で大きなローンを抱え、節約のために酒を我慢すると言った客もいる。たまに思う。「みんなあまり外に出なくなった。あの人、どう過ごしているのかしら」

 店をたたむことも考えている。でも、また訪ねて来てくれる客がいるかもしれないと、心は揺れる。精いっぱいのお化粧をして、もう少しだけ、自慢の小鉢に「おいしいね」と舌鼓を打ってくれる客を、待ってみようと思っている。(神崎卓征)

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