これからの天皇像「平成と同じ姿勢、共感は得られない」

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 「令和」の時代が始まった。平和を願い、国民と共に歩んだ上皇さま、上皇后さまの後を受け、50代後半で即位した天皇、皇后両陛下。どのような天皇像をつくっていくのか。辛酸なめ子さんや元皇室担当記者らに聞きました。

本当に発信したいことを 成城大教授・森暢平さん

 被災地訪問や戦争犠牲者への慰霊、平和祈念といった平成の時代の天皇・皇后が取り組んできたことを引き継いで欲しいという論調が多いですね。しかし、私は、そうは思わない。時代は確実に変わっている。前の世代と同じことを続けても、効果的ではないことは明らかです。

 平成の天皇・皇后は、昭和の代とはまったく違う姿をみせ、衝撃を与えました。例えば、被災者の前でひざまずくという姿勢です。しかし、同じことを引き継いでもインパクトはないし共感は得られない。時代に即した新しい姿勢を見せなくては、人々の心に届きません。

 美智子妃(当時)は、洋風キッチンに立つ姿をみせ、公団住宅を訪問し、マイカーでドライブした。豊かな生活への憧れと2人の姿がシンクロしました。国民の憧憬(しょうけい)の対象としての天皇制は、ラジオや新聞を通じて、大正時代から存在していましたが、2人はそんな時代にいました。

後半はコラムニスト・辛酸なめ子さん、能楽観世流二十六世宗家・観世清和さんのインタビューです。

 平成がスタートしたころは「日本国民」という共同体がまだ堅固でしたが、現代は国民というフィクションが崩れ、島宇宙的な共同体が分立しているようにみえます。日本国民という「全体」に向かって祈ることが、以前と同じリアリティーをもっては受けとめられなくなっています。

 国民全員に好かれようと「理想的」な天皇を演じることは現代の象徴天皇制にとってもプラスではない。ネットの時代には「アンチ」の人が必ず出現します。自分たちの体験に基づいた、本当に言いたいことを発信しないと、共感が得られません。

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 即位後も、上皇夫妻の存在感…

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