太宰治「お伽草紙」完全原稿を発見 70年ぶり387枚

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中村真理子
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 作家、太宰治(1909~48)の代表作の一つ「お伽草紙(とぎぞうし)」の完全原稿が見つかった。「瘤(こぶ)取り」「舌切雀(したきりすずめ)」など日本の昔話を元にした作品集。戦時下に執筆され、終戦直後に単行本が出たあと行方がわからなくなっていた。東京都目黒区の日本近代文学館で、6日から公開している。

 400字詰め原稿用紙を半裁して使っており、その200字詰め原稿用紙で387枚。こよりで4分冊につづられていた。個人が長く所蔵していたという。防空壕(ぼうくうごう)で5歳の娘に昔話を聞かせながら着想した物語だと説明する「前書き」の原稿では、「猿蟹合戦」の文字がペンでかき消されて「舌切雀」に書き換えられていた。太宰が原稿を書き直しながら、取り上げる説話を変更した形跡がわかる。また、「瘤取り」は、原稿で「アメリカ鬼、イギリス鬼」だった表現が、45年10月の単行本では「××××鬼、××××鬼」に、46年2月の再版では「殺人鬼、吸血鬼」と改められていく。東京大空襲後、太宰は疎開先の甲府でも空襲に遭い「お伽草紙」の原稿を手に、焼けた家から逃げたという。

 安藤宏・東大教授(日本近代…

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