続く下痢、クローン病診断 栄養不足「命に関わるかも」

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佐藤建仁
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【まとめて読む】患者を生きる・食べる「クローン病

 大学生の時に水球選手として活躍していた埼玉県の男性(55)は、肛門(こうもん)付近が痛かったり、体重減少が続いたりしました。原因は分からないまま。約10年後、症状が再発してようやく、大腸や小腸に炎症が起こる難病「クローン病」と診断されます。

原因不明の下痢、体重は48キロに

 毎日、朝食から丼飯3杯。その上に目玉焼きをのせ、マヨネーズとしょうゆをかけて平らげる学生だった。

 埼玉県の会社員の男性(55)は大学で水球部に所属し、日夜練習に励んでいた。水球の日本代表選手だったこともあり、引き締まった逆三角形の体形をしていた。

 しかし、1984年ごろ、70キロ近くあった体重が1年ほどで約10キロ落ちた。「鶏ガラみたいな体だな。プールでだしが取れるぞ」と仲間にからかわれた。

 食べる量も体力も変わりなく、さほど気に留めず試合に出場していた。一方、下痢が続き、肛門(こうもん)のあたりが強く痛むことに悩んでいた。病院に行くと、肛門の近くにうみがたまる「肛門周囲膿瘍(のうよう)」と診断され、手術を受けた。

 大学卒業後に結婚し、しばらく体調は落ち着いていたが、東京都内のIT企業で働いていた93年、30歳で肛門付近の症状が再発した。食事は以前と変わらないのに下痢が続く。病院を何カ所も回ったが、「胃腸疾患」と言われるばかりで薬をのんでも改善しない。体重は48キロまで減った。

 94年、当時暮らしていた神奈川県内のクリニックで大腸の内視鏡検査を受けた。診断は「クローン病」。すぐに大学病院を紹介された。聞き慣れない病名だったが、ようやく診断がついたことに、少しほっとした。

 

 同県内の大学病院で検査を受け、妻(55)と結果を聞きに行った。「クローン病は主に大腸や小腸などに炎症が起こる原因不明の病気で、すでに特徴的な潰瘍(かいよう)ができている」と医師は告げた。国指定の難病で治療法が確立しておらず、肛門部にも病変ができやすい。悪化すると腸閉塞(へいそく)を起こしたり、腸に穴が開いたりする可能性がある。約2時間、丁寧な説明を受けた。「栄養状態を改善しないと、命に関わるかもしれない」と、医師に言われた。

 妻は「このままだと死んじゃうかも……」と深刻に受け止めた。長男は2歳になったばかり。男性はだまって説明を聞いていたが、不安が渦巻いた。子どもの将来は?生活はどうなってしまうのか――。診察室を出ると、涙があふれた。

診断はクローン病 ポテト食べ嘔吐

 大学病院の医師に、「入院して絶食し、点滴で栄養を入れる治療をすぐに始めましょう」と勧められた。

 ただ、いつまで入院が必要な…

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