地域の祭り、あいさつは「意見交換」 政活費から5千円

有料記事2019統一地方選挙

森下裕介 福井万穂 多知川節子
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 税金から払われる政務活動費(政活費)。香川県議らは、「会費」などの名目で、町内会や住民のサークルといった団体に多額の支出をしている。議員が乗る公用車は、ルールを定めた文書が存在しない。

「意見交換」に年100万円以上?

 「意見交換会費」「総会費」などの名目で政務活動費を支出しているケースも目立つ。2017年度だけで総額は1千万円を超え、1人で計100万円以上を出した議員も。「やめたくても、やめられない」との本音も漏れる。

 県西部で17年にあった秋祭り。特設された舞台上で、地元選出の国会議員や県議が、順繰りにあいさつをしていった。

 地元選出の県議の1人は、実行委員会側に5千円を差し出した。祭りの関係者は、県議があいさつしたことしか覚えていない。それでも、「みんな忙しくても来てくれた」と満足そうに振り返る。5千円は、会場の設営費に充てたという。

 一方、県議の政活費収支報告書をみると、この5千円の領収書が添付されていた。祭りの実行委の名前と、「会費」とただし書きがあった。

 17年度は、任期途中で辞職した2人を除く39人のうち25人が、「会費」「意見交換会費」といった名目で支出していた。領収書の額面は、ほぼ全てで5千円か1万円だった。

 総額が最も多かったのは、県中部選出の自民党県議。1年間で計100万円超を払っていた。領収書は約120枚に及び、発行者は自治会土地改良区社交ダンスのサークルのほか、「盆踊り保存会」「少年野球クラブ」などが並ぶ。

 公職選挙法は、政治家による選挙区内の寄付を禁じている。食事などを提供されたとしても、金額に見合わなければ差額が寄付とみなされる可能性もある。この県議は取材に対し、「金だけ持って行けば寄付だが、意見交換をしている。会費は弁当や茶菓子などが出るため必要」と説明した。

「ゆっくり聴いてもらえる場は1万円」

 領収書の枚数が最も多かったのは、県西部選出の自民党県議。1年間で170回以上の会合に出て、政活費を計100万円ほど使っていた。18年1月17日は、1日で11回の「意見交換会」に出たことになっていた。

 それでもこの県議は、主催者から案内状が来たものしか参加していないという。「人数が多いところや、話をゆっくり聴いてもらえる場は1万円。それ以外は5千円」と話した。

「みんなで一斉にやめるしかない」

 政活費を使うような会合とは何か。17年度、県内の公民館で意見交換会を複数回、開いた関係者によると、地元の住民たちを集めて県議らを呼んだ。

 「議員と話をし、要望もする。食事したり、お酒を飲んだりすることもある」。会費は住民らも払うこともあるが、「議員には『お祝い金』のような形で出してもらう」と話す。領収書は、議員が持参することもあるという。

 こうした意見交換会費などをめぐり、市民オンブズ香川は、県議に返還させるよう知事に求める訴訟を高松地裁に起こしている。

 争われているのは、13年度の「会費」2360件。なかには、地域の祭りやカラオケ大会への支払いがある。オンブズ香川の渡辺さと子事務局長は、「県民の意見を聞くことは、お金を使わなくてもできる」と批判。「自治会や業界団体にお金をばらまいているのが実情で、それが地盤固めとなり、無投票の原因にもなっている」

 日大法学部の岩井奉信教授(政治学)も「本当に意見を聞いているのか、疑問なものもある。政活費の最大の問題点」と指摘する。ただ、「規制は難しいのではないか」とも話す。

 ある自民県議は、本音を吐露した。「自分だけやめたら情報も入らず、誰も相手をしてくれなくなる。選挙もやっている。みんなで一斉にやめるしかない。本当は(開催する側に)やめてもらいたい」

議会公用車、衆院選出陣式にも

 県議会には、運転手つきの公用車が4台ある。公務で使うのが原則だが、17年度には、国会議員の出陣式に行ったり、1人で年200回以上乗ったりしていた。県議会は、政務活動との線引きが難しいなどとして運用のルールを定めておらず、「乗り放題」なのが実態だ。

 県議会公用車はいずれもトヨタで、議長がセンチュリー、副議長がクラウン、「共用」がクラウンとアルファード。1280万~450万円で購入された。

 朝日新聞が情報公開請求で得た17年度の運転日報によると、衆院選公示日の17年10月10日午前、県中西部選出の県議が、自民党衆院議員の出陣式を公用車で訪れていた。この日は、午後の県議会本会議まで公務はなかった。

 県議は取材に、公用車で行ったと認め、「国会議員の選挙であいさつするのは儀礼的な意味。公用車を使っても、著しく常軌を逸した行動とは思わない」と説明。「本会議までにいったん自宅に戻る余裕もなかった」と話した。

ベテラン議員の利用、突出

 共用の車2台は、全ての会派が使っていたが、当選回数の多い議員がよく利用している傾向があった。空車時に他の議員が乗ることもある副議長車を含め、利用が年100回以上だったのは、いずれも自民党会派の県議3人。特にベテラン2人の利用回数は突出していた。

 議長経験のある県議は、議長車の分は除いても、少なくとも160日の使用があった。1日に4回乗ることもあり、延べ約320回にのぼった。県議によると、地元と議会との往復がほとんどで、議会から公務の会合に行くことも多いという。

 取材に対し、「途中で私用に近いこともあるかもしれない」としつつ、「時間的、物理的なことから効率性を考えると、いったん戻って乗り換えるなど、できるわけがない」と話した。

 高松市選出の県議も130日以上、延べ約220回と多かった。「議会から会合への行き帰りに使うことが多い。(どんな会合かは)覚えていない。先輩たちが使っていたようにしている」と取材に話した。

■行き先、市と町の名前のみ…

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