「先生、一生懸命生きてるか」 あの生徒思い出す桜並木

有料記事桜ものがたり

小林一茂
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桜ものがたり2019

 47年前、うららかな陽気とは裏腹に兵庫県宝塚市の丘の上の住宅街に向かう辰巳正風さん(70)の足取りは重かった。

 大学で障害児教育を学び、教員に採用された。同市で受け持ったのは重い障害があり、就学できない子どもたち。13人の生徒のうち、まず訪ねたのが脳性まひの13歳の生徒だった。

 通された薄暗い部屋に生徒は寝ていた。「こんにちは」。反応がない。辰巳さんを見た祖母が話しかけた。「この人、あんたの先生か?」。すると生徒は体をのけぞらし、歯をくいしばりながら顔いっぱいに笑みを浮かべた。「授業ができる」。意思が通じ合った瞬間、喜びと安堵(あんど)が湧いた。帰り道、見上げるとソメイヨシノの並木道は満開だった。生徒から感じた躍動感、教師ができる期待感が一層美しく見せていた。

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 肯定なら笑顔、否定ならしか…

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