精錬所遺構、復活しアートの島へ シンボルの煙突も活用

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文・久保田侑暉 写真・加藤諒
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時紀行

 瀬戸内海の小さな島に、わずか10年で操業を停止した精錬所の跡地がある。1世紀前の繁栄を感じさせる巨大な遺構は、90年近く放置されていた。そんな精錬所の一部が美術館に改装され、人口50人以下の島の希望として生まれ変わった。

 瀬戸内海に面した岡山市南東部の宝伝港。この静かな港から、2月、船に乗った。定員は22人。荷物を抱えた郵便局員らに交じって観光客の姿があった。向かう先は、対岸に浮かぶ「犬島(いぬじま)」だ。

 島の周囲は約3・6キロ。バスもタクシーも走っていない。人口50人に満たない島を訪れる人のお目当ては犬島精錬所美術館だ。赤茶色の煙突が数本そびえ、先端が崩れているものもある。

 1909年から10年間操業した銅の精錬所の産業遺構が活用され、入り口には黒いれんがの壁が当時のまま立ち並ぶ。明治後期の面影を色濃く残しながら、現代アートを展示する美術館として注目され、毎年2万人が訪れている。

 最盛期には数千人が暮らしたが、銅価格が暴落して停止し、その後放置され続けた。子どもたちがかくれんぼをした跡地では、いつしか子どもの姿も見られなくなった。島で生まれ育った在本(ありもと)桂子さん(74)は「少しずつ崩れていく煙突の姿が、この島の未来のように感じられた」。

 精錬所の閉鎖から100年。瀬戸内海に浮かぶ直島(香川)などで進むアート活動にも関わった芸術家が「アートの島」構想を打ち出し、2008年、美術館として生まれ変わった。再び島のシンボルとなった「精錬所」を訪ねた。

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