2017年の夏、東京都あきる野市。俊太郎(27)は足場やはしごをのぼり、建築中の2階建て住宅の屋根の上に立った。目線は地上8メートル。深く息を吸い込んで見上げると、快晴の青空が広がっていた。
〈やっぱり空って青かったんだ〉
みんなは僕らをニートと呼んだ。そう、僕らは引きこもっていた。どう生きていけばいいか分からずに。けれども僕らは変われたんだ。屋根の上で汗だくになり、青空を見上げる快感を知ってしまった。もう後には戻らない。やっと居場所が見つかり、仲間とも巡り合えたのだから。(敬称略)
他人と顔を合わせるのはもっと嫌
高校までの成績は悪くなかった。でも推薦で入った大学で目標を見失ってしまった。就職活動の時期を迎えても何かをする気になれず、卒業後は友人とも連絡を絶った。
「いま思うと、なぜ逃げちゃったのかな。自分で勝手に孤立を深めてしまった」
大学を卒業してからの3年間、俊太郎にとっての空は夜空だった。川崎市の自宅の部屋に閉じこもり、本やマンガを読んだり、寝ていたり。窮屈な思いはあったが、外で他人と顔を合わせるのはもっと嫌だった。
夜になると、1人で散歩に出た。近所の河原のベンチ、ときには墓地に腰掛けて星空や月を眺めた。でも将来の展望は何も見えてこなかった。
ニート生活が2年あまり続いたところで、両親から川崎市の「地域若者サポートステーション(サポステ)」を紹介された。ニートの自立支援を促すための組織だ。そこで、戸建て住宅の屋根づくりを手がける南富士(静岡県三島市)社員の土井智恵(32)と出会った。
■日本の若い人材は尽きたのか…
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