鹿あるところに彼らあり 「瑠璃色の宝石」草陰で奮闘

有料記事

机美鈴
【動画】奈良公園の鹿の糞を食べる糞虫に魅せられ、「ならまち糞虫館」をオープンした中村圭一さん=机美鈴撮影
[PR]

「まだまだ勝手に関西遺産

 「たで食う虫も好きずき」と言いますが、奈良のコガネムシのごちそうは…なんと鹿のフン!? そして、そんな虫を愛してやまない人たちもいるのです。

 鹿あるところに糞虫(ふんちゅう)あり。

 奈良公園の約1300頭の鹿は毎日1トンに上る糞(ふん)を排出するとみられるが、公園が糞に覆われることはない。今回の主役は糞虫と呼ばれるコガネムシ。糞を食べ、分解し、ハエ発生の抑制にも貢献しているのだ。

 奈良公園、宮城の金華山、広島の宮島は、人呼んで「糞虫の3大聖地」。金華山と宮島で確認された糞虫は約15種だが、奈良公園は約50種にも上る。聖地の中の聖地だ。奈良女子大の佐藤宏明准教授(昆虫生態学)は、虫が糞を食べる理由を「鹿が消化しきれなかった繊維質がペースト状になっており、効率よく栄養を吸収できる」と説明する。

 全国で糞虫を探し歩いた昆虫学者の塚本珪一(けいいち)さん(88)は「春日大社がまつる神は鹿に乗ってきたと伝わり、鹿たちは保護されてきた。鹿は芝を食べ、糞虫は糞を食べ、奈良公園は美しい。信仰と生命が織りなす共生のハーモニーです」と話す。

 塚本さんが「瑠璃色の宝石」と語るのが体長2センチほどのオオセンチコガネ。全国に遍在し、体の色は緑か赤に二分されるが、奈良周辺で見られる個体はつややかな瑠璃色を帯び、ルリセンチコガネとも呼ばれる。色の秘密は解明されていないが、正倉院の瑠璃杯はコガネムシから着想を得たのかも、なんて夢想したくなる。

 奈良県大和郡山市の高校3年…

この記事は有料記事です。残り1034文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら