ふいに黙る愛犬 「いけるぞ」老漁師はテグスを引いた

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笠原雅俊
【動画】老犬ジョンと漁師の徳永悦男さん
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 老漁師は再び漆黒の太平洋に出た。11月に入るまで長らく不漁続きだった。船上の相棒はジョン。オスの13歳の老犬だ。漁場に向かう間、じゃれつき、海鳥にほえ、かまびすしい。水平線が白々としてきたそのとき、ジョンの鳴き声がやんだ。

 高知県奈半利(なはり)町の徳永悦男さん(78)は漁師歴55年。中学卒業後、カツオの一本釣り漁をへて、いまは黒潮が流れる室戸岬沖で高級魚のキンメダイを狙う。

 2005年、生後まもないジョンをもらい受けた。犬や猫が苦手の妻の通子さん(74)から「あなたが世話してね」と任され、船に乗せてみた。当初は激しく吐いたジョンも船に慣れた。同船するようになってから13年が過ぎた。

 出港から帰港までの12時間は、ふたりだけで過ごす。「今日はよう釣れたな」「そろそろもどろうか」。徳永さんは甲板でうたた寝するジョンに話しかける。激しく叱ると、ジョンは徳永さんの長靴をかむ。

 「退屈な海の上ではジョンが話し相手さ。女房よりも過ごす時間が長いんだ」

 今年は異変の連続だった。6…

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