世にもぜいたくな「番組のおしらせ」(小原篤のアニマゲ丼)

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 1978年4月から85年3月まで、毎夜7時59分から放送されたNHK「番組のおしらせ」のバックに流れていた陶器の人形によるアニメーション「メルヘンシリーズ」を覚えていますか? 制作したのは、名作短編「野ばら」(77年)などで知られる映像作家・高橋克雄さん(1932~2015年)です。おもちゃ映画ミュージアム(京都市中京区)で開催されていた「平和へのメッセージ 映像作家 高橋克雄の世界」最終日の11日、同館で作品上映とトークイベントがあり、久しぶりに見直しました(それもスクリーンで!)。

 陶器人形の格調の高さが生きる「長靴をはいた猫」「森は生きている」、モブシーンがものすごい「ガリバーの冒険」、各キャラの個性が動きによく表れた「さるかに」、表情が愛らしい「ねずみの嫁入り」……。うっとりしますね。「番組のおしらせ」などという地味というかさりげないコーナーに、何とぜいたくな映像が流れていたものか。「メルヘンシリーズ」は前身のコーナーを含めて9年半ものロングランとなり、NHKから感謝状が贈られたそうです。

 同じく陶器人形による「野ばら」も上映され、何度も見ている作品ですがやはりウットリ。国境警備兵の老人と青年が国の違いを超えて友情を結ぶがやがて戦争によって引き裂かれ……という小川未明の名作童話をアニメ化。カラフルでツヤツヤした陶器人形が2人の汚れない心を映し、バラを育てチェスに興じる穏やかな日々をキラキラした幸福感で彩ります。そして終盤、老人の夢の中に、青年を含む敗軍の兵たちが灰色一色の無表情の人形となって現れ、強いコントラストをなします。人形は冷たく、硬く、重く、心を失っているよう。一瞬、色と表情を取り戻す青年のかすかなほほえみが、かなしい余韻を残します。見事な演出。ニッコリ笑顔やビックリ仰天顔は、いま見ると大げさすぎるのですが、そこはまあご愛敬というところで。

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 トークでは、長女の高橋佳里…

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