トランプ氏が犯罪集団と呼ぶ移民「私たちをそう思う?」

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シウダーイダルゴ〈メキシコ〉=岡田玄 ニューヨーク=土佐茂生
【動画】グアテマラからメキシコ国境を越え、北上する移民キャラバン=岡田玄撮影
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 トランプ米大統領が、米国入国を阻止するために軍派遣も決めた中米からの移民キャラバン。米国境を目指し、北上をやめるどころか新たな移民が次々とメキシコに入国していた。

 国連難民高等弁務官事務所の職員によると、約2千人がこの日、グアテマラからメキシコ国境を越えたメタパという町の広場に着いた。今後も数百人が追いかけてくる見込みだという。

 だが、すべての人が一緒にたどり着けたわけではない。

 大集団から遅れて川を渡った20人ほどの集団が、本隊を追いかけていた。そこへメキシコの警察がきて、「移動をやめなさい」「難民手続きをしましょう」と説得していた時だった。

 「逃げろ」と叫び声が聞こえたかと思うと、移民たちが草むらに飛び込んだ。「捕まえろ」。土煙が上がる中で、警察官と移民局の職員が移民たちを捕まえ、車に押し込んだ。移民局職員に抱えられた子どもが「嫌だ」と泣き叫び、お年寄りが「国には送り返さないで。見逃しておくれ」と懇願していた。

 グアテマラの国境の町テクンウマンで休んでいたアンドレア・メレンデスさん(16)は高校を中退してきた。「エルサルバドルでは未来が見えなかった。あるのは、誰でもできるような仕事か、犯罪がらみの危険な仕事だけだった」

 治安も悪く、1人で道を歩くのも怖かったという。殺人事件が毎日のように起こり、友人は家族を殺された人もいる。キャラバンに多くの近所の人が参加するのを見て、母ジャクリーンさんと来ることを決めた。シャンプーやせっけんなど使える物は友人にあげると、手元に残ったのはリュックサック二つ分の着替えと携帯電話だけだった。

 地面に横になって寝るのはつらいが、「今は希望がある。米国に行くまでがんばる」と笑った。

 トランプ氏はキャラバンを「犯罪集団」などと呼ぶ。アンドレアさんは「私たちを見てそう思う? 私たちは一日一日、食べるために働くだけ。私たちは米国のために、そして家族のために働く移民。トランプさんだって移民の子孫なのに」と話した。

 エルサルバドルから来た一団のリーダーの一人、ビルと名乗った男性は話す。「誰かが組織したのではなく、勝手に集まった集団。休む場所を決め、みんなの心配をしていたら、知らない間にリーダーのようになっていた」

 トランプ氏は民主党や大富豪のジョージ・ソロス氏が移民キャラバンの資金援助していると言う。だが、「私たちを見て、お金があるように見えますか」。地べたに座って休み、突然の雨でぬれた服を乾かす人たちを見渡した。

 メキシコで警察や移民局に捕まった人たちは、国境から25キロほどにある都市タパチュラにつくられた難民収容施設に送られ、メキシコ政府が難民として一時滞在許可を発行するという。

 だが、近くの公園には、収容施設から逃げ出したホンジュラス人たちがいた。第1陣で来たという。前夜に逃げ出したという男性は「施設に2週間いたが、食事もわずかで地面にマットレスが置いてあるだけ。携帯電話の充電さえ認められず、家族への連絡も許されなかった。自由に外を歩けると言われたのにうそだった」と憤った。

 1歳の娘と逃げ出したホンジュラス人の女性(24)は「どこへ行っても、ひどい扱いを受ける。私たちは働いたらお金を稼げる新しい未来がほしいだけなのに」と語った。(シウダーイダルゴ〈メキシコ〉=岡田玄)

「移民キャラバン」とは

 中米から米国への移民を目指す一団。15年ほど前から移住労働者を支援する非営利団体が道中を案内してきた。ここ数年はこの団体が呼びかけ、米メキシコ国境に移動し難民申請をしてきた。現地報道などによると、これまでの参加者は数百人から千人規模。米国境に到着するのは1割ほどとされる。難民申請が認められるのはわずかで、メキシコにとどまる人もいるという。

 だが、今回の一連のキャラバンは、ホンジュラスで政府と対立する左派活動家の呼びかけが発端。支援団体は計画に関与しておらず、当初は参加しないよう呼びかけていた。次第に参加者が増えたため、道中の危険を減らすために支援を始めたという。その後、参加者は周辺国にも拡大し、出国が続いている。

 今年は10月13日にホンジュラスを出発した先頭集団が現在、メキシコ中部ベラクルス州を移動している。このまま米国の国境に向かったとしても、まだ数週間かかるとみられる。支援団体によると、グアテマラとの国境ではまだ約2500人がメキシコ入りを待っているという。

 メキシコは南部オアハカ、チアパス両州にいるという条件付きで、一時的な滞在を認め、教育や住居などを提供すると表明した。

 メキシコメディアなどによると、キャラバン参加者は計約9千人とみられ、ホンジュラス、グアテマラ、エルサルバドルが中心。貧困率が60%を超す国があるなど、いずれも最貧国とされ、日常的に米国への合法、非合法の移民が多い。殺人事件の発生率も極めて高く、治安の悪化も米国移民を希望する理由となっている。

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